2017年11月26日

《編集長EYE》 教育に情熱を燃やす前川喜平氏=橋詰雅博 

 10月25日付東京新聞の読者投稿欄「ミラー」に神奈川県大和市に住む主婦の大宮啓子さん(72)の一文が掲載されていた。中身はこんな具合だ。

〈厚木のシャッター通りといわれる一角に「えんぴつの会」と手書きの表示がしてある。民間で運営する自主夜間中学。9月末のある日、そこに四十数人が集まっていた。フィリピンやコロンビアの若者たちだ。

 彼らは戦争や病気、不登校や家庭の事情などで小学校の勉強ができなかった。学びたくても学べなかった人たちの意欲はすごい。全く日本語の分からなかった男女が普通に日本語で会話し、漢字の書けなかった人が検定を受けるまでになった。(中略)

 教える人はすべてボランティアだ。先生と生徒の師弟関係というより、一人一人の人間として、お互いに学び合う姿勢が貫かれている。(中略)彼らに公的な教育支援がいきわたるよう強く願っている〉

 実は文部科学省前事務次官の前川喜平氏(62)は、えんぴつの会で勉強を教えるボランティアをしている。9月初旬に本紙インタビューを受けた際、この「学習ボランティア」についてこう言っていた。

「私は2、3人の方をマンツーマンで教えている。その一人は80歳近い男性です。身の上話では、幼いころ両親が亡くなり、親戚に預けられ家事労働をさせられた。耐えられず家出した後、炭鉱で働いた。学校に1度も行ったことがない。字は書けない、読めないでよく生きてこられたと思いました。現在は、ひらがな、カタカナを読めて書ける小学校低学年の国語レベルまできている」

 彼は福島市の民間の自主夜間中学でも教えている。

 「70代の男性は、中学は卒業しているが、それは形式だけで、小学校レベルの知識です。新聞を読んで理解したいという彼のニーズに応えるため朝日新聞を教材として使っている」(前川氏)

 人間の尊厳を保つには学習は不可欠という前川氏、教育への情熱は高まる一方だ。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年11月25日号
posted by JCJ at 12:58 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする