2017年12月28日

≪リレー時評≫ 最高裁の受信料制度「合憲」判決、公共性が問われるNHK=隅井孝雄

 NHKの現行の受信料制度について、最高裁判所は12月6日「合憲」と認めた。
 放送法は「NHKを受信できる設備を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」としている。一方受信料の支払いは、NHKの内部規約だ。そこでこれまで「受信者はNHKの番組や経営姿勢に同意できない場合には、支払拒否もありうる」という解釈が有力だった。判決は「双方の意思表示の一致は必要だ」としながらも、「受信料は合理性、必要性がある」とした。NHKとっては追い風だ。

 1990年代の初頭、本多勝一『受信料拒否の論理』に触発されて、受信料拒否が注目された。2004年紅白歌合戦の制作費着服の発覚をきっかけに、不払いが広がり、2005年1月海老沢勝次会長が引責辞任した。収納率は低下、2006年度末までには63%まで落ち込んだ。NHKが不払いに対する裁判を始めたのは2006年11月からだった。
 その後、籾井勝人元NHK会長が、「政府が右というものを左とは言えない」と発言(2014年1月)、政府寄りの姿勢を見せたことから、市民の新しい運動形態として「籾井退任まで支払いを保留する」という動きで、一期での退任という結果となった。
 受信料訴訟のほとんどはNHKによる。だが奈良地裁では視聴者が「NHKは放送の公正を守っていない、放送法順守義務違反だ」として46人が集団訴訟している。

 現在、NHKはインターネットへの放送再送信を計画しており、受信料をデジタル機器所有者にも付加するかどうかが論議を呼んでいる。デジタル時代、変化する受信料環境に、最高裁は全く触れなかった。
 私が注目するのは最高裁判決が受信料の役割を述べている部分だ。
(受信料は)「特定の個人、団体、国家機関から支配や影響が及ばないよう、広く負担を求めた」。「憲法が保障する表現の自由の下、国民の知る権利を充足する」。

 現実はどうか。安倍第二次政権下で、政府主導のメディア操作、NHK御用化が進んでいる。「公正ではない放送を繰り返せば、免許停止もありうる」発言(高市元総務相、2016年2月)、国谷裕子キャスター退任(2016年3月)、「安倍首相の意向を代弁するレポートばかりだ」と批判される記者、秘密保護法、集団的自衛権、安保法制についてNHK報道が民放に比べて著しく不十分、などなどを視聴者は体験している。
 果たしてNHKは「国家機関からの影響が及ばない」、「知る権利を充足する」公共放送なのか、という疑問が市民、視聴者の間で広がっている。
posted by JCJ at 09:28 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする