2017年12月30日

≪おすすめ本≫ 新垣毅『沖縄のアイデンティティー』 沖縄メディアで奮闘する記者の情熱と使命感=米倉外昭(「琉球新報」文化部記者)

 「新聞記者をしながら本を書く」ということがどれほど大変なことか、私には、正直なところ実感できていない。今年、2人の畏友がそれを実行した。
 沖縄タイムスの阿部岳『ルポ沖縄 国家の暴力』(朝日新聞出版)が8月に発刊された。そして11月、琉球新報の新垣毅『沖縄のアイデンティティー』(高文研)である。

 阿部は北部支社報道部長として基地問題の最前線を担当。副題は「現場記者が見た『高江165日』の真実」である。全国から機動隊を動員してヘリパッド(オスプレイ発着場)の建設工事が強行された「戒厳令下」の現場を、軍事基地に反対する住民の立場に身を置いてリアルに描写。「政府の暴走を本土の無関心が可能にしている」と指摘する。
 名護市安部海岸のオスプレイ墜落など、大事件が相次ぎ、忙殺されている阿部が本を出したと知った時は驚いた。あとがきに、半年間、休日を全て執筆にあてたとある。日本全国に伝えなければという強い情熱と使命感ゆえであろう。
 ネトウヨの攻撃にもさらされている沖縄メディアには、多くの「本土」出身記者がいる。東京生まれの阿部は「沖縄に対する本土という多数派、加害者の側にいる者として」「責任の果たし方は、これからもずっと問われていくだろう」と記し、本土出身という「十字架」を背負って現場に身を置くことの決意を示した。

 一方、新垣は「沖縄人」としてアイデンティティーを正面から問うた。東京支社報道部長の新垣は、沖縄と「本土」がぶつかり合う第一線である東京で多忙な日々を送る。そんな中で、20年前の修士論文を基に、その後の取材や変化を踏まえて加筆・修正したという。
 記号論、言説(ディスコース)理論、ポストコロニアリズムなどの用語は、ややとっつきにくいが、「うちなーんちゅとは何者か」と自問自答しながら、格闘してきた成果を結実させた。これも情熱あふれる一冊である。
「沖縄のアイデンティティー」.jpg
posted by JCJ at 13:36 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする