2018年03月01日

〈沖縄リポート〉権力むき出しの市長選=浦島悦子

 あまりにも異様な選挙だった。それは、期日前投票数(21.622)が当日投票数(15.522)を6000票以上も上回った前代未聞の事態にも如実に表れている。「国策」である辺野古新基地建設を阻む稲嶺進市長を何としても潰すという国家権力の意思と、その恐ろしさをひしひしと感じさせられた選挙だった。
 安倍自公政権のやり方は巧妙を極めた。選挙前に、市民・県民の大多数が反対する新基地建設に向けた工事を加速することによって「あきらめ感」を誘い、外堀を埋めた。「どうせ造られるのだから、もう苦しむのはやめて楽になろうよ」と甘くささやいた。
 自公推薦の渡具知武豊候補は新基地建設問題に一切触れない「争点隠し」を徹底。公開討論会などの要請もすべて断り、政策論争を避ける一方、稲嶺市政の8年間の実績を打ち消すように 「失われた8年」「停滞」「閉塞感」などのネガティブキャンペーンを繰り広げた。
 自民党幹部や現職大臣が次々と応援のため名護入りしたが、彼らは表には出ず企業回りに徹し、ふんだんなカネを使って水面下でさまざまな工作を行った。菅官房長官は「うちのような小さな会社にまで?」と経営者が驚くほど徹底的に市内各企業に電話を入れた。公明党は広い名護市域の隅々にまで全国動員した運動員を送り込み、甘言、強要、誘導などあらゆる手段を駆使して、人々を期日前投票所へ運んだ。唯一、表の役割を担った小泉進次郎氏は告示以降2回も名護入りし、街頭演説会に集まった若者たちをそのまま期日前投票所へ誘導した。
 警察は、稲嶺陣営を公職選挙法の厳格な適用によって締め付ける一方、渡具知陣営の違反は野放しにした。
その結果、約3500票差で渡具知氏が当選したが、20年以上「国策」に翻弄され、苦しみ続けた名護市民は、今回の選挙でさらに分断され、傷つけられた。渡具知新市長は「勝者」ではなく、翻弄された一人にすぎない。これは選挙に名を借りた国家犯罪だ。味を占めた安倍政権は、11月の沖縄県知事選でも同じ手口を使ってくるだろう。
 今後の各種選挙や国民投票も見据えて、名護市長選とは何だったのか徹底検証が必要だ。その教訓を踏まえ、本来の選挙のあり方を取り戻さなければ、民主主義の明日はない。
posted by JCJ at 15:45 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする