2018年03月07日

《ワールドウォッチ》危険な核戦略に乗り出すトランプ政権=伊藤力司

 トランプ米政権は2月2日、アメリカの「核態勢の見直し」(NPR Nuclear Posture Review)を発表した。爆発力を抑えた小型核弾頭の開発や非核兵器に対する反撃にも核兵器の使用を排除しないなど、核兵器への依存拡大を鮮明にした。「核なき世界」を目指したオバマ前政権が8年前にまとめたNPRからの大きな方針転換である。
 今回のNPRは、ロシアや中国の核戦力増強や北朝鮮やイランの核開発など「アメリカは過去のいかなる時期より多様で高度な核の脅威に直面している」として、予測不能の脅威に対抗するために米国の保有する核兵器の近代化や新たな核戦力の開発を宣言している。
 例えば、ロシアが局地戦に用いる戦術核に対抗して、爆発力が低くて「使いやすい小型の核兵器」を開発するという。米国がこれを使用した場合、敵国はそれが小型核か破滅的な被害を及ぼす戦略核か判断に迷い、反撃すれば全面的な核戦争に拡大するだろう。
 さらに新NPRは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に用いる小型核や海洋発射型の核巡航ミサイル(SLCM)を開発する方針を表明。爆発力を抑えた小型核は「一般市民を巻き添えにする恐れが減る」と、核兵器使用のハードルを下げる危険を伴う。
 この新方針は、昨年国連加盟国の圧倒的多数で採択された「核兵器の使用と威嚇」を否定した核兵器禁止条約に真っ向から挑戦するものであり、米国が加盟している核兵器不拡散条約(NPT)の核軍縮についての誠実な交渉の誓約にも明らかに違反している。
 ところが河野太郎外相は、直ちにNPRを「高く評価する」との談話を発表した。これは広島と長崎の被爆以来、日本国民が被爆者を先頭に一貫して追求してきた核兵器廃絶を目指す努力を否定するだけでなく、毎年8月に開かれてきた広島、長崎における平和祈念式典や一昨年6月のオバマ前大統領の広島訪問時における安倍晋三首相自身の発言をも矛盾する発言である。われわれ唯一の戦争被爆国の国民として、トランプ政権の新核戦略とこれに恥ずかしげもなく追随する安倍内閣と河野外相に、強く抗議し続けなければならない。
posted by JCJ at 11:24 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする