2018年05月17日

≪おすすめ本≫ 酒井啓子『9.11後の現代史』─混乱を極める中東から不寛容な世界の今を解き明かす=栩木 誠

 「21世紀の中東しか知らない若者には、『今見ている世界と中東がこんなに怖いことになってしまったのは、そんな昔からじゃないんだよ』と伝え、20世紀の中東を見てきた少し年嵩の人たちには、なぜ世界と中東がこんなことになってしまったのかを考える糸口を示すために書かれたものである。そしてその目的は、『世界と中東がこんなことになってしまったのにはちゃんと理由がある』ことを示すことにある」

 イラクをはじめ中東研究の権威である著者が本書に込めた思いが、この一文に凝縮されている。
 第一次世界大戦時に締結された「サイクス・ピコ協定」、パレスチナを巡る英国などの「二枚舌問題」など、20世紀を通じて中東で起きた諸事態は欧米諸国が行ってきた所業のツケでもあった。
 そのツケは2001年に起きた「9.11世界同時多発テロ事件」を契機に、さらに大きくなっている。混乱を極める中東から世界の今を読み取り、次代にどうつなげていくのか、根源から問う。

 9.11からイラク戦争、アラブの春、IS問題、難民問題など、日常のニュースに登場する諸問題の内容と系統的な連関、世界に及ぼす影響を分かりやすく解説している。9.11以降の中東、それを通した世界の現代史が丁寧に整理されており、「中東問題は複雑でわかりにくい」と思っていた人にも理解しやすい。
「中東がこのような混とんとした状況に陥った要因を徹底的に解明してこそ、その解決の道が見出せる」
 著者の熱い思いが行間から強くにじみ出ている。
(講談社現代新書800円)
「9.11後の現代史」.jpg
posted by JCJ at 07:55 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする