2018年05月18日

【月間マスコミ評・放送】「4条擁護」にとどまらぬ議論を=諸川麻衣

 先日、政府が検討している放送制度改革の方針案が明らかにされた。放送を電波からネットに移し、NHK以外の民放は基本不要とし、自由な放送を可能にして新規参入を促すため、政治的公平などを義務づけた放送法4条を撤廃、さらに番組基準策定、番組審議会設置などの規定もなくすという。
 この報道に奇異な感じを抱いた人は多いのではあるまいか。なぜなら、自民党自身が過去、「政治的公平」を錦の御旗にして放送にたびたび圧力をかけてきたからだ。NHKの慰安婦問題の番組に放送前に「公平・公正にやってください」と「注文」をつけて大改ざんに至らしめたのは他ならぬ現党総裁だし、二〇一四年には在京テレビ局に「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」を送り、出演者の選定・発言回数や時間、街角インタビューや資料映像についてまで公平中立を求めて物議を醸した。
 こうしたことから、昨年のデイヴィッド・ケイの調査報告書では、「メディアの独立性を強化するため、政府が放送法4条を見直し廃止することを勧めたい」と提起したほどである。
むろん、今回の方針案は自民党政権の「反省」を示したものとは言えない。ネット放送に自民党寄りの新規事業者が多数参入し、沖縄を取り上げた『ニュース女子』のように、公平など無視したフェイク・ニュースや番組が氾濫すればそれで良いのだろう。
 既に民放の経営者や労組、新聞からは、「放送が果たしてきた公共的、社会的役割について考慮がされていない」、「産業振興の色合いも強く、放送の社会的使命を軽視している」、「放送の不偏不党が損なわれる心配が大きい」などの批判が出ている。
 件の『ニュース女子』を放送倫理違反としたBPO意見は、「伝える情報の正確さの追求、裏付けの徹底、偏見の排除といった、放送人が歳月をかけて培ってきた価値観が尊重されなければならない。それこそが『公平、公正な立場』に立った放送」だと述べる。放送法四条の公平原則の必要性は専門家の間でも意見が分かれる。政府の改革案に単純に「四条擁護」を対置するだけでなく、放送に求められる最低限の質とは何か、それを法律でどう規定し、行政権力を介入させずにどう実現するかを今や本格的に議論するべきではあるまいか。
     
posted by JCJ at 18:50 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする