2018年06月14日

《ワールドウォッチ》利己的な動機で親イスラエル政策 =伊藤力司


 トランプ米大統領は、国内での不人気を挽回するために反イラン・親イスラエル政策を打ち出し、中東危機を深めている。同大統領は5月8日、イラン核合意(JCPOA))から一方的に離脱したのに続いて同14日、米大使館をテルアビブからエルサレムに移転した。いずれも米国内の反イラン・親イスラエルの世論に迎合したものである。

 アメリカでは今年11月に中間選挙が行われ、米下院議員435人全員、米上院100人中33人が改選される。現在の下院はトランプ与党の共和党が多数派を占めているが、最近の各州の趨勢は民主党が優勢を占めつつある。このままで行けば中間選挙で共和党が敗れ、下院で民主党が多数派を占めることになりかねない。アメリカ憲法によると、下院が大統領弾劾を過半数で議決すれば有効となる。しかし下院で弾劾されても上院で弾劾されなければ、クビはつながる。上院では弾劾には3分の2多数の議決が必要だ。クリントン元大統領は下院では弾劾されたが、上院で

 3分の2多数の弾劾議決を免れ命拾いをした。クビはつながっても大統領の権威はがた落ちだ。

 これまでのところ、共和党の地盤とされてきた中西部など各州で共和党の旗色が悪く、トランプ氏としては何としてもこの流れを止めなければならない。そのためにはアメリカ世論に圧倒的な影響力を持つ「イスラエル・マフィア」の力を借りるのが手っ取り早い。

 親イスラエル派の中でも特別な組織がある。全米人口3億2000万人の25・3%を占めるといわれる「キリスト教福音派」だ。トランプ大統領の有力な支持基盤であり、彼は米大使館のエルサレム移転を2016年の大統領選挙の公約に掲げていた。11月の中間選挙を前に、大使館移転の公約を実行して「福音派」の支持基盤を固めておこうとした訳だ。

 GPOAとは、2015年に米露中英仏独の6か国がイランと結んだ協定で、イランの核兵器開発を抑止する一方、イランの石油輸出など対外経済活動の自由化を認めたもの。この協定でイランからの石油が世界市場に流通し、燃料価格が世界的に低下した。しかし米国がGPOAを離脱した途端、イラン産原油の先細りを恐れたニューヨークの原油先物市場では、バレル当たり65ドルだったものが71ドル台に跳ね上がった。バンカメの予測では1年後に原油価格は100ドルを超えるかもしれないという。
posted by JCJ at 10:29 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする