2018年06月25日

《編集長EYE》 反撃パワーがすごい韓国の放送局=橋詰雅博

 安倍晋三首相は陰に陽に放送局に手を突っ込み自分に都合のよい報道をさせようとしている。突然言い出した放送法4条撤廃はその代表格で、政権寄りの番組を増やす狙いがあった。政府の規制改革推進会議では反対意見が続出し、安倍首相に4条撤廃見送りを答申した。  

 しかし、首相は撤廃方針案を断念したわけではない。再び方針案を持ち出す危険性がある。

 政権批判報道を封じ込めるため放送局支配≠ニいう悪だくみをめぐらすのは時の権力者の常だ。民主化から31年たつ韓国でも、李明博大統領ら保守政権が強権を発動して放送局を占領≠オた。この言論統制に抵抗する記者やプロデューサーを中心にしたドキュメンタリー映画「共犯者」を都内で見た。李大統領(2008年から13年)は公共放送のKBS(韓国放送公社)と公営放送のMBC(文化放送、公営財団・放送文化振興会が大株主)にお友達をトップに送り込んで、政権批判の番組を廃止に追い込んだ。KBSとMBCの労働組合は抗議の声が上げたが、組合員は解雇、配置転換、停職、出勤停止、減給などの懲戒処分を受けた。

 権力と手を組み放送局を台無しにした「共犯者」元社長・幹部をカメラの前に立たせた崔承浩監督は、MBCの調査報道番組プロデューサーとして活躍したが、12年に不当解雇された。上映後、崔監督は 「権力による無慈悲な弾圧に対して言論の自由の確保と、市民からの『キレギ』(キジャ=記者とスレギ=ゴミの合成語。マスゴミとかゴミ記者の意味)と蔑まされたメディアの信頼を回復させるため私たちジャーナリストは闘ってきた」と強調した。

 長期ストライキなどの約9年間に及ぶ闘争でポチ社長≠追放し、KBSもMBCも正常な放送局にやっと戻る。崔監督は昨年末にMBC社長に就任した。昨年5月に革新系の文在演大統領が誕生したことも背景にある。

 ともあれ韓国放送局の権力への反撃はすさまじい。


(JCJ事務局長兼機関紙編集長)



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
posted by JCJ at 13:44 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする