2018年06月27日

他国頼み 無策の証明 拉致問題 安倍「司令塔」発言に唖然=蓮池透

米朝首脳会談の実現は、懸案の日本人拉致被害者の解決につながるのだろうか。これについて、北朝鮮による拉致被疑者家族連絡会(家族会)元副代表の蓮池透さん(63)に寄稿してもらった。

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 昨年まで米朝関係は緊張を極め、「開戦前夜」「Xデーはいつか?」とまで言われるほどであった。しかし、今年に入り東アジアの情勢は劇的に変化した。4月27日ついに文在寅大統領と金正恩国務委員長による首脳会談が実現し、「板門店宣言」が発表された。さらに、米朝首脳会談も実現するなど、朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の終焉へ向けて一挙に南北融和が進み、世界は圧力局面から対話局面となったのである。そうした中で日本は「蚊帳の外」「周回遅れ」と誰もが認めているにもかかわらず、安倍晋三首相は、ひとり自覚もなくただ「拉致問題の解決」を唱えている。



首相は言行不一致

 以前から、拙著やさまざまな機会を通じて、安倍首相は拉致問題を政治利用する気はあっても、本気で解決する意欲などない、と訴えてきた。日本政界の現況を見れば、噓が公然とまかり通る憂慮すべき状態であり、その元凶である安倍首相は、政治家としての信念や矜持など全くない、ただ権力にしがみつくだけの言行不一致の人物だと考えている。

米朝首脳会談の知らせを聞いて焦った安倍首相は、4月12日に訪米し、トランプ大統領に会談で拉致問題を取り上げるよう要請した。しかし、拉致問題はもとより日本と北朝鮮の間の固有の問題である。それを「アメリカ・ファースト」を標榜するトランプ大統領が拉致被害者それも日本人を救出するだろうか。本来、北朝鮮側との独自交渉を早急に展開し解決すべきだった問題を、主体性や当事者意識を持つことなく他国頼みにするしかなかった。これこそ、日本がお手上げ状態で、これまで安倍首相がいかに無策であったかという事実の証明である。

 安倍首相が講じた手段は、北朝鮮に対する経済制裁などの「圧力」のみ。だが経済制裁により、北朝鮮がもがき苦しみ自ら拉致被害者を差し出してくる―この理屈は、幻想に過ぎない。そのツケが、現在の「蚊帳の外」状態という形で回ってきているのである。しかし「北朝鮮が圧力に屈した」と強がりの声が聞こえてくる。ただ呆れるばかりだ。極めつけは、家族らの集会で自分が拉致問題解決の「司令塔」だと発言した。遥かに厚顔無恥の域を越えており言葉がない。

 ここで大きな疑問が湧いてくる。安倍首相は、果たして東アジアの平和を望んでいるのだろうか、と。昨年の衆院選挙で、戦中を想起させる「国難」という言葉を使い「北朝鮮の脅威」を煽り勝利したのだから、北朝鮮は「脅威」でなくては困るのであろう。



独自ポリシーなし

 「祭りのあと」の状況で安倍首相は、拉致問題にどう対処するのか。「対話のための対話は意味がない」と主張していたのに、トランプ大統領が対話だと言えば「支持する」、首脳会談中止にも「支持する」、米国の言うことは何でも支持である。独自のポリシーなど微塵もない米国追従のなせる業である。しかし、いい加減に圧力一辺倒から対話へと路線変更することが基本であり、日朝首脳会談しか手段はない。ただし、「備え」がなければ、「全員返せ」「解決済み」の水掛け論で終わってしまうのは自明だ。そこには、拉致被害者に関する「インテリジェンス」が必須なのである。「解決済み」とは言わせない強力な「インテリジェンス」だ。

 果たして、安倍首相はそれを保持しているだろうか。そこは「外交の安倍」、当然「備え」はあるはず。1回目の小泉訪朝からすでに16年も経過しているのだから。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
posted by JCJ at 10:56 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする