2018年06月28日

米軍基地 置きたいのは誰か 沖縄から見る米朝急接近=黒島美奈子

 戦後73年、沖縄に駐留し続ける在沖米軍。駐留の理由や根拠はその時々で変化してきた。

 最初の米軍基地は1945年4月1日、沖縄島の読谷村に上陸した米軍が南北へ侵攻しながら日本軍の飛行場跡や、住民の土地を次々と奪い建造された。理由は間近に控えた日本本土攻撃の拠点として。現在、日米両政府が名護市辺野古へ移設するという米軍普天間飛行場(宜野湾市)が造られたのもこの時期だ。

 戦後は、朝鮮戦争やベトナム戦争の出撃拠点として、沖縄の米軍基地はさらに拡大していった。同じころに本土では米軍基地の反対運動が激化。国民の反発を避けるためいくつかの基地機能が沖縄へ移転された。

「地理的優位性」

日本復帰後は、日米が結んだ「安全保障条約」によって米軍の沖縄駐留が継続することに。日本防衛の「地理的優位性」が沖縄にあると、日米が喧伝するようになったのはこのころからだ。

 しかし、冷戦が終わるころにはこの「地理的優位性」に疑義を唱える声が増える。そんな中で発生したのが1995年の米兵による少女暴行事件だった。事件をきっかけに日米は普天間飛行場の返還を宣言。沖縄にとって史上初の米軍基地縮小の道筋となる米軍再編ロードマップも誕生した。消えかけた駐留根拠。そこに再び息を吹き込んだのが北朝鮮のミサイル問題である。

 元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「軍隊をどこに置くかは財政的、政治的な理由で決まる」と言う(2018年4月28日付『沖縄タイムス』)。「米軍が対北朝鮮や対中国のために沖縄にいなければならない軍事的理由は元々ないが、それを説明する論理として脅威論が使われてきた」 

 脅威論を使ってきたのは日米両政府だ。日本や米国本土に一気にミサイルが飛んでくる危険性の高まりを沖縄への米軍駐留の根拠と明示。2017年度の防衛白書では北朝鮮などに「相対的に近い(近すぎない)」位置にあるという表現で沖縄の地理的優位性を強調した。

 だがこの根拠には疑問も湧く。なぜなら米国を敵対視する北朝鮮が、日本を攻撃対象とする理由として米軍基地の存在を挙げたからだ。それは、米軍の駐留根拠である日米安保こそが、戦争を誘発する危険性があることを示している。

「ほかの任務」とは

 米国と北朝鮮の首脳の歩み寄りを演出した6月12日の米朝首脳会談。終了後の記者会見でトランプ米大統領は、在韓合同軍事演習の中止に言及した。会談によって北朝鮮の脅威が多少なりとも薄れたことを示唆する発言で、日米が主張する沖縄への米軍駐留の根拠が揺らぎ始めた瞬間だった。

 ただ、在沖米軍四軍調整官のニコルソン中将は4月、米朝首脳会談を前に記者会見し、北朝鮮の非核化が実現した場合でもほかの任務への対応を理由に駐留は必要との認識を示した。会談の成果が沖縄駐留に与える影響を見通したかのような発言だった。

 ニコルソン氏が言う「ほかの任務」とは何か。東アジアの安全保障を盾に、米韓合同軍事訓練中止に即座に懸念を示した小野寺五典防衛相の態度がそれを暗示している。脅威の消失を理由に引き揚げようとする米軍を引き留める日本の姿である。

 沖縄に米軍基地を置きたがっているのはほかでもない日本だ。米朝首脳会談で見えたのはそんな事実だった。

(沖縄タイムス社会部副部長兼論説委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
posted by JCJ at 14:13 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする