2018年07月26日

《政治情勢》 南スーダンPKO撤退真相 「リスク取り除き、長期政権にらむ」 布施祐仁講演=安住邦男

 JCJ出版部会は7月13日に都内のYMCAアジア青少年センターで講演会を開いた。ジャーナリストで平和新聞編集長の布施祐仁さんによる「自衛隊が戦争に征(ゆ)くとき」と題した講演要旨は次の通り。
   
 2016年7月に南スーダンの首都ジュバで政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が勃発し、内戦が再燃しました。しかし日本政府は、「散発的な『発砲事案』で、武力紛争が発生したとは考えていない」と説明して活動継続の方針を表明しました。
 さらに、「「POKO5原則は維持されている」「ジュバは平穏」として、10月には派遣期間を延長することを閣議決定しました。そして11月には安保法制に基づく新任務(「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防衛」)の付与まで閣議決定されました。
 日本政府の説明に疑問を抱いた私は、南スーダン派遣部隊の日報を開示請求しました。しかし新任務付与直後の12月初め、「日報はすでに廃棄しており、存在しない」と不開示を決定しました。ところが約2カ月後の2017年2月になって、防衛省はそれまで「「存在しない」と言っていた日報を突如公表しました。

激しい戦闘の実態

 自衛隊宿営地のすぐ横の「トルコビル」で、激しい戦闘がありました。7月10日には「ウエストゲート付近で激しい戦闘があり」「「戦車砲を射撃してトルコビル西端に命中」しました。大臣報告文書には「10日以降、日本宿営地南西約50b付近で激しい銃撃戦が発生し、流れ弾が宿営地にも飛来した模様」との記述があります。ただし日報ではこの部分は黒塗りされています。「市内での突発的戦闘への巻き込まれに注意が必要」との記述もあります。
 さらにNHKの取材でも明らかになったように、宿営地の上空を銃弾・砲弾が飛び交い、宿営地内にも20発以上が着弾しています。避難民を保護したウガンダ軍宿営地の隊長室が直撃を受けて兵士二人が負傷しました。隣のバングラデシュ軍が反撃して、一時「交戦状態」になっています。日本隊の隊長は隊員に武器携帯と射撃許可を出し、ある隊員は「南スーダン人を殺してしまう可能性も出てくる」と述べ、自分の手帳に「遺言」を書いた隊員もいたとのことです。
 「南スーダン政府の受け入れ同意があるので、自衛隊が武力紛争に巻き込まれることはありえない」という日本政府のロジックは完全に破綻しています。だから日報は隠蔽されたのです。
 「憲法9条の問題になる言葉は使うべきではないので、「衝突」と言う言葉を使っている」という稲田大臣の科白は、この間の事情を最もよく示しているといえましょう。

 保存期間10年に

 現地情勢を隠蔽・改ざんしないと成り立たない海外派遣を25年間続けてきましたが、もうごまかしは限界です。
 この事案を機に、防衛省は海外派遣部隊の日報の保存期間を1年未満から10年に変更し、期間満了後も国立公文書館に移管することを決めました。「存在しない」と説明してきたイラク派遣の日報も435日分見つかりました。公表された日報には、自衛隊が駐留していたサマワでも戦闘が発生したことが記されています。自衛隊も占領軍とみなされ、武装勢力の攻撃対象になっていたのです。迫撃砲・ロケット報による攻撃は計13回に及んでいます。
 南スーダンからの撤収の本当の理由は、「何かあったら政権に大きなダメージになる」「長期政権を見据え、リスクを取り除きたかった」というのが本音でしょう。

 安住邦男

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
posted by JCJ at 12:40 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする