2018年07月27日

《国際情勢》 核兵器禁止条約 日本は批准を 被爆者が生きているうちに=沢田 正

 核兵器廃絶への扉を開いた核兵器禁止条約が国連で122カ国の賛成で採択されてから今月7日で1年になった。条約は50カ国が批准した90日後に発行する。米英仏が露骨に反対を表明、採択に賛成した国に署名・批准しないよう圧力をかけていると報道されているが、18日までに、59カ国が署名、オーストリア、コスタリカ、キューバ、メキシコ、パラオ、パレスチナ、タイ、ベネズエラ、ベトナムなど11カ国・地域が批准した。

来年末条約発効も

 核禁止条約への貢献でノーベル平和賞を受けた国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲国際運営委員は5月の講演で、署名国への聞き取り調査でさらに約40カ国が来年前半までに批准できると回答しているとして来年末に条約発効の見通しを明らかにしている。
 ストックホルム国際平和研究所が6月発表した今年1月時点の世界の核弾頭総数は9カ国で計1万4465発(昨年比470減)。冷戦ピーク時の約7万発から大幅に減ったものの、人類を何回も滅亡させるに足る数だ。
 この間の減少は世界の核弾頭の9割超を保有する米ソ・米ロ間の戦略核兵器削減条約(START)に基づくものだが、米ロ関係がウクライナ問題などで鋭く対立し、「冷戦終了後最悪の状態」といわれる中で、2021年に期限を迎える現行の新STARTの延長や新条約交渉の動きはなく、核軍縮の見通しは暗い。

 トランプ政権は2月2日、新たな核戦略指針である「核態勢の見直し(NPR)」を公表した。「使える核」をめざし、爆発力を抑えた核兵器の小型化や新たな核巡航ミサイルの開発とともに、核の先制不使用政策を否定、通常兵器による攻撃に対しても核の使用などを打ち出し、核軍拡方針を鮮明にした。
 これに対しプーチン・ロシア大統領は「核兵器使用の敷居を低くする」と新NPRを批判、対抗して新たな巡航ミサイルなどの開発を公表、世界は米ロの核軍拡の危機に直面している。
 「唯一の戦争被爆国」を称する日本政府は、核保有国と一体となって禁止条約に反対、採択に加わらず、この1年、署名も批准もしないと国内外で表明してきた。さらに、NPRに対しては、世界に先駆けて河野太郎外相が「高く評価する」と歓迎を表明、トランプ政権の核軍拡を後押しする姿勢を示している。

 朝日新聞によると、この1年で全国の地方議会の約2割にあたる322議会が政府に禁止条約への署名・批准を求める意見書を採択している。
 被爆地広島では、禁止条約の交渉会議段階から、オールヒロシマで条約の実現を後押ししようと、反核団体、被爆者団体、市民団体などが「核兵器禁止条約のためのヒロシマ緊急共同行動実行委員会」を結成、27団体が参加して、原爆ドーム前集会や今年1月、広島を訪れたベアトリス・フィンICAN事務局長との意見交換会など6回の共同行動を積み上げ、その模様を写真や動画で世界に発信してきた。今月20日にはICANのティム・ライト条約コーディネーターとの意見交換会を開き、条約の発効への道筋を探る。

目標署名140万

 また一昨年4月から始まった核兵器廃絶を求めるヒバクシャ国際署名では今年3月19日、二つの県被団協や生協、広島県、広島市など77団体と個人が参加して広島県推進連絡会を結成、県民の半数の140万筆を目標に取り組んでいる。
 こうした中で、1964年に原水禁系と原水協系に分裂して以来、同じ名称で活動してきた二つの広島県被団協に統合の動きが出ている。原水協系の被団協が6月の定期総会で統合方針を決定、もう一つの被団協も前向 きに検討の方向とされる。
 まもなく8月6日と9日がやってくる。
 安倍晋三首相はオバマ米大統領広島訪問の際、原爆死没者慰霊碑の前で「核兵器のない世界を必ず実現する」と誓い、その後の平和祈念式典でも「核兵器のない世界へ向けて努力を積み重ねる」と誓った。今年も同じだろう。安倍政権の下では禁止条約の署名、批准が望めないことは明らかだ。
 被爆者の平均年齢は今年3月末で82歳を超え、被爆者がいる時代の終わりが近づいている。被爆者が生きているうちに被爆国政府が禁止条約に署名・批准するように被爆地ヒロシマから核兵器廃絶を求める大きなうねりを巻き起こしていきたい。
沢田 正(JCJ広島支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
posted by JCJ at 11:28 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする