2018年07月29日

【今週の風考計】7.29─猛暑お見舞い、おすすめ「緑陰図書」

まだまだ猛暑は続く。本など読む気も起きない。これが本当のところだろう。それでも緑陰を見つけて、いや熱中症が怖いから、クーラーつけて室内で読むとしたら、気楽にページをめくり、ついつい読み終えてしまう本がいい。
BGMには、フィッシャー指揮・ブタペスト祝祭管弦楽団のメンデルスゾーン「夏の夜の夢」(チャンネル・クラシックスCCSSA37418)がいい。

まずは矢部太郎『大家さんと僕』(新潮社)が、おすすめだ。1階には大家のおばあさん、2階にはトホホな芸人の僕。二人が展開する「ほっこり、心和む」ハプニングは、老いも若きもない。誰しも頷く新しい「家族のかたち」である。奇跡の実話漫画だ。

続いて若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)。74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫をなくした悲しみを乗り超え、残りの人生は自分なりに生きようと、「おらの今は、こわいものなし」の気持ちで辿りついた、新たな<老いの境地>を描く。
著者の生まれ故郷、遠野地方の口承文芸にも通じる会話文と地の文章が、重なり合う叙述に圧倒された。本書のタイトルは、同郷の作家・宮沢賢治が妹トシの死に際して詠んだ、長編詩「永訣の朝」にある〈Ora Orade Shitori egumo〉からとっている。

最後は、梯 久美子『原民喜』(岩波新書)をおすすめしたい。「原爆被災時のノート」をもとに書いた『夏の花』で知られる原民喜は、39歳のときに広島で被爆した。傷ついてもなお<死と愛と孤独>を抱え、「悲しみのなかにとどまり続け、嘆きを手放さないことを自分に課し続けた」稀有な生涯を、著者は丹念に描く。
原爆ドームを背に広島平和記念公園に立つ原民喜の詩碑には、彼の作品である「碑銘」が<遠き日の石に刻み/砂に影おち/崩れ墜つ/天地のまなか/一輪の花の幻>の詩句とともに刻まれている。 8月6日が近い。(2018/7/29)

posted by JCJ at 10:34 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする