2018年08月15日

《ワールドウォッチ》米覇権の放棄目指すトランプ=伊藤力司

 1年半前の就任以来トランプ米大統領の対外政策展開は世界を驚かせ、反発を呼んできた。同大統領は就任早々、TPP(環太平洋連携協定)や地球温暖化防止のパリ協定から米国を離脱させ、今年5月には安保理常任理事国ら6カ国が苦心の末に結んだイランとの核合意から米国を一方的に離脱させた。
 
 これらの行いの目的は何か?それは第2次大戦後アメリカが担ってきた世界的覇権を放棄することではあるまいか。東西冷戦時代に米覇権の及ぶ範囲は自由世界だけだったが、1991年のソ連崩壊以後その範囲は全世界に及んだ。以来27年、世界一の軍事大国であり世界一の経済大国であるアメリカも、世界的覇権の維持にくたびれてきたようだ。
 
 今世紀初頭の8年間を担ったブッシュ政権がアフガン戦争とイラク戦争を始めたのは、彼らなりに覇権を護るためだったろうが、結果的にはアメリカの覇権を大きく傷つけた。
 
 アメリカの覇権は「自由」と「民主主義」を表看板にしてきたが、アフガン戦争とイラク戦争、それにシリア内戦介入がもたらした膨大な殺戮と破壊は「自由」と「民主主義」の美名を大きく傷つけた。
 
 トランプ大統領としては、化けの皮がはがれてきた「アメリカの覇権」より、彼の篤い支持層である白人労働者たちの「俺たちにまともな職と賃金を」という訴えを重視する。こうしたトランプ流反覇権政策に反対しているのが民主党と共和党の旧主流派である。
 
 NYタイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビなどリベラル系メディアは総じて大統領に批判的だ。CIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)、司法省など旧来の権力機関もそうだ。アメリカ権力の中枢と言われる軍産複合体やウォール街の金融資本も反対だ。
 
 だからトランプ流の脱覇権政策もジグザグ・コースをたどらざるを得ない。この間、世界的覇権をひそかに狙っているのが中国だ。毛沢東主席はかつて「中国は覇権を求めない」と宣言、現在の習近平主席も同じセリフを発している。しかし世界第2の経済大国であり、年々2桁の国防予算増額を続けている中国は、遠からずアメリカを追い越す。とすれば、やがては中国が世界の覇権を握る日が来るかもしれないのだ。

posted by JCJ at 14:32 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする