2018年09月08日

≪おすすめ本≫ 斎藤貴男『戦争経済大国』─米国の戦争で築いた日本の繁栄 戦後平和の虚妄を鋭く問う=杉本恒如(「しんぶん赤旗」経済部記者)

 日本経済は1955年から73年まで、飛躍的な成長を遂げ、「奇跡」の高度成長と言われた。
 この奇跡は米国の戦争によるものだった。朝鮮戦争特需を足掛かりに、ベトナム戦争特需を跳躍台とし、日本企業は「他国の人々の不幸に乗じて儲けた」のだ。戦争経済の実態を明かし、虚構の戦後論を覆すため、著者は本書を世に問うた。

 歴史の再考を促す熱意は、足を使った取材の分厚さに表れている。ベトナム戦争と日本経済の関係を掘り下げた研究は少ない。著者は企業や官庁の当事者を訪ね歩き、資料を丹念に掘り起こす。
 総合商社の元社員はベトナム戦争に感謝した同僚の発言を回想する。「おかげさまで合成ゴムの全体が儲かる」。米兵の履く熱帯仕様のブーツが日本製だったためだ。貿易政策の中心にいた通商産業省(現経済産業省)の元キャリア官僚も証言する。戦争で「突然マーケットが開いた」と。
 当時「死の商人」を非難した市民団体、労働組合も取材対象にしている。権力による弾圧や謀略もあった。挫折や堕落、過激派の行動にも大きな紙幅を割き、また過ちや後退からも教訓を汲みあげようと努めている。

 著者は「憲法9条を本物にしなければならない」と語る。自身を含む護憲派の思想と行動を、もう一段高める決意が、底流にあるからだ。
「もう戦争する時代じゃない」。米国の戦争で財を成した沖縄企業の元会長が、あっけらかんと発する言葉に、新しい経済への転換に向けたヒントが垣間見える。
(河出書房新社1800円)
「戦争経済大国」.jpg
posted by JCJ at 10:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする