2018年10月03日

《月間マスコミ評・新聞》自民総裁選にみる「国民不在」=白垣詔男


 「党首選はるかに遠く民の声」―これは西日本9月5日の朝刊に載った読者による「ニュース川柳」だ。正に今回の自民党総裁選は「国民不在」だった。総裁選びがそのまま「首相選び」に直結するので、国民、読者に視点を定めた報道が必要だったが、その視点は極めて少なかった。
 
 この点を指摘した社説は9月4日の朝日「国民は視野にないのか」と11日の西日本「国民に開かれた論戦こそ」の2紙だけだった。
朝日は「(その原因は安倍)首相側が、一貫して論戦に後ろ向きな姿勢を示している」と分析、西日本は「内向きの『集票合戦』では意味がない」と訴えた。

 総裁選は9月7日に告示されたものの、北海道地震のため告示から3日間「休戦」、しかも「休戦明け」の10日は両候補が所信表明しただけで、首相はその日の午後、ロシアに出掛けた。首相帰国の14日まで論戦はなく事実上の「休戦」となった。首相は「論戦に後ろ向き」というより論戦から逃げたとしか思えなかった。首相が不在で総裁選も盛り上がらなかった。
 
 少ない「選挙論戦」を補うように毎日は告示前の4日から「論点/争点」と題して総裁選に向けて4回の連載を展開。「アベノミクスに功罪」「米中との溝 どう対処」「9条改憲 内輪の論理」「政治主導 揺らぐ理想」と、「丁寧に説明する」と言いながらほとんど話さない安倍首相に代わって「遠い民の声」を意識して、読者に問題点を掘り下げた。「安倍政治」をどう読むか、積み残した多くの懸案に対して安倍首相が、どう立ち向かうのか立ち向かわないのか、その指摘とも言えた。
 
 毎日は先の通常国会閉会後にも「棚上げの問題群 点検 通常国会」と題して6回連載した。「森友文書改ざん問題」「加計学園問題」「日報放置・議員罵倒」「働き方改革法」「カジノ・参院6増」「相次ぐ失言・失態」と、いまだに解明されていない「問題群」を取り上げ、事実上の「安倍政治批判」を繰り広げた姿勢は評価される。
 
 一方、読売は「総裁選 問われるもの」と題して8月28日から9月6日まで自民党幹部、元幹部を登場させて6回連載したが、いずれも視点は国民側にはなく正に「自民党の内向きの姿勢」の印象が強かった。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号


posted by JCJ at 14:50 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする