2018年10月06日

【リレー時評】 道徳教科書に真珠湾での安倍演説が載る!=清水正文

 今年の春から小学校で教科としての「道徳」が導入され、授業が行われている。続いて中学校が来年度から導入される。現在、全国で中学道徳教科書の採択が行われており、結果が判明した。
 中学では8社が検定申請し合格した。その一つに今年度から新規参入した教科書会社「日本教科書」がある。安倍首相のブレーンの一人である八木秀次・麗澤大学教授(日本教育再生機構理事長)らが、2016年4月に中学の道徳教科書を出すために設立した会社だ。
 八木氏は同年9月に代表取締役を退任したが、その後任に『マンガ嫌韓流』などのヘイト本を出版する「晋遊舎」の武田義輝氏が就任。かつ日本教科書の所在地は、この出版社内にある。

 「道徳」の教科化そのものに大きな問題があることが指摘されてきた。国家が定めた徳目・価値観の押し付け、特に愛国心や伝統・文化を子どもたちに押し付ける内容が各社ともに目立っている。さらに、道徳の教科化にあたって文科省は数値による評価はしないとしてきたが、8社中5社が生徒に5段階で自己評価させる欄を設けている。生徒の内心を数値で評価させるものであり、愛国心などの価値観の押し付けが憂慮されている。

 とりわけ日本教科書の道徳教科書には突出した復古主義・国家主義的内容が含まれている。例えば、吉田松陰を登場させるために、中学生が陸上競技の走り込みで松下村塾の前を通る話を作ってみたり、新潟県長岡市がハワイと姉妹都市提携をして真珠湾で花火を打ち上げる「白菊」という教材の最後に、突然、安倍首相が行った真珠湾での演説を1ページにわたって載せている。
 自己評価についても日本教科書が最も露骨である。「礼儀を大切にし、時と場に応じた言動を判断できる心」「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」「日本人としての自覚をもち、世界の平和や人類の幸福に貢献しようとする心」などを、4段階で評価させている。

 教科書の採択についても日本教科書は政治介入ともいえる策動を行っている。今年1月の教育再生首長会議の会合で、顧問の八木氏と代表取締役の武田氏の連名で「会社案内」とともに、市長宛に「御案内」なる文書を配布したことが明らかになった。
 「御案内」は「弊社に関する資料を同封したのでぜひご覧ください」と、市長が積極的に教科書採択に関与することを求め、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」と述べている。
 9月11日現在、全国各地での教科書採択について、現場の声を反映する公明正大な討議や採択を求める取り組みもあり、日本教科書の道徳教科書は、栃木県大田原市と石川県小松市のみ採択されたが、他では採択されていない。

posted by JCJ at 00:51 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする