2018年10月09日

【JCJ賞講評】 受賞逸した8作品に敬意 リアルなドキュメントぞろい=伊藤洋子 

 今年度JCJ賞選考委員会は13作品中5作品をJCJ賞に決定した。経過と受賞作品に関しては本紙7月25日号で既報の通り。本稿ではその他8作品を紹介する。

 樋田毅『記者襲撃―赤報隊事件30年目の真実』―朝日新聞阪神支局へのテロ事件を当初から時効後も30年間追い続け、真相解明に挑戦し続けてきたジャーナリストの苦渋と魂が伝わる力作。事件の真相は闇の中だが…

末浪靖司『「日米指揮権密約」の研究 自衛隊はなぜ、海外へ派兵されるのか』―膨大な米公文書を収集分析し、数多の日米密約の中でも日本の独立と文民統制を捻じ曲げる本質は自衛隊の指揮権密約にあると突き詰めた努力と熱意の成果が生み出した渾身の作。

布施祐仁・三浦英之『日報隠蔽 南スーダンで自衛隊は何を見たのか』―自衛隊の南スーダンへのPKO派遣をめぐり、大手紙の特派員は現場からルポを敢行。フリーの記者は情報公開請求で日報の隠蔽を暴く…二人三脚で隠蔽の実態をリアルに伝えるドキュメント。

毎日新聞「『旧優生保護法を問う』キャンペーン報道」―障害者たちに強制不妊手術が許された旧優生保護法はナチスの「断種法」をモデルに戦後50年余も施行されていた!事実。沈黙せざるを得ない人々への粘り強い取材で国の人道に背く犯罪を明らかにした。

中国新聞「企画『核なき世界への鍵』を中心とした核兵器禁止条約に関する一連の報道」―広島の地元紙として被爆者や市民に寄り添い、核兵器や日本政府の問題点など多角的に取り組んできた報道はヒロシマからの視点を世界のものとする。

毎日放送『愛国と教育〜教科書でいま何が起きているのか』―ナショナリズムと歴史修正、政治が教育を蹂躙する実態を次々と描きだす。教育基本法を改悪した安倍政治の狙い、日本の教育現場に起きている凄まじい状況を告発した力作。

北日本放送『イタイイタイ病 記者たちが見た50年』―富山県で発生したイ病が公害認定されて50年。この間関わった記者たちを通して描かれる県の隠蔽体質と権力に飲み込まれるメディアの実態は今日的状況への問題提起であり、イ病も過去でないと教えてくれる。

NHK『スクープドキュメント 沖縄と核』―米の統治下、世界最大級の核の島・沖縄の実態を機密文書や未公開映像、元米兵への取材で迫る力作。 

戦慄すべきミサイル事故は日本政府に認識されていたのか否か。新たな疑問も湧いてくる。 (順不同)

伊藤洋子(JCJ選考委員)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号
posted by JCJ at 16:22 | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする