2018年10月27日

【政治情勢】 保革超え玉城知事生む 県民のアイデンティティー結集 辺野古ノー=次呂久勲

 「うちなーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー!」その瞬間、この言葉が頭の中でこだました。

当確こんなに早く
 9月30日午後8時過ぎ、県知事選の投票を締め切った瞬間、玉城デニー氏の当確が速報された。当初、接戦が予想され、当落判明も午前0時ぐらいかと言われていた。
 当日、豊見城市の開票所で、票読みを担当していた私のもとへ、妹からの一通のメール「デニーさん当確出たね」。現場では当然ながら、まだ開票作業すら始まっていない。はたして、本当だろうか?こんなに早く当確出して大丈夫なのか?そうした心配も沸き上がったが、一人の県民として、素直に喜んだのと同時に、冒頭のあの言葉がよみがえったのだった。

 4年前の沖縄県知事選挙において、公明党沖縄県本部は、党本部との見解と異なり、辺野古新基地建設反対を表明し、自主投票の判断を下していた。しかしながら、今回は自民党とともに、佐喜眞淳氏に推薦を出し、全力を挙げて選挙活動を展開した。さらには、その知事選挙に出馬し、7万票近くも獲得した日本維新の会の下地幹郎衆院議員も支援に加わり、維新の会としても、佐喜眞氏を推薦していた。このことからみても、いくら4年前の選挙では、10万票もの大差で、翁長雄志氏が勝利したとはいえ、今回の選挙戦スタート時点で、すでに数万票の差がついていたことは想像に難くない。

 さらに8カ月前の名護市長選において、圧倒的有利とされ、事前の世論調査でもリードしていた稲嶺進氏が、3千票余りもの大差で、渡久地武豊氏に敗れたというトラウマも潜んでいた。
 それが故に、今回の8万票もの大差がつくとは予想だにせず、8時過ぎの当確に至っては驚きを隠せなかった。

肌感覚でわかるよ
 後日、真っ先に当確を出した放送局の記者に話を聞くと、「もう、デニーさんでしょ。取材していると肌感覚でわかるよ」と。さらに、投票日3日前に期日前投票を済ませた友人に話を聞くと、「(期日前投票所となった商業施設で)並んでる人みんな、デニーさんに投票したはずよ」と言うので、その理由を聞くと「並んでる人たちの表情が、あの(翁長さんを偲ぶ)県民大会に参加していたひとたちと同じだった。あの時の雰囲気そのままだった」と答えたのだ。
 政権与党は、2月の名護市長選の勝利以降、主要首長選で勝利を重ね、この県知事選を最大の決戦と位置付けていた。だからこそ、真っ先に立候補を表明した安里繁信氏との候補者一本化に成功し、自公維の推薦も取り付け、それこそ、名護市長選時と同じ枠組みを構築したのだった。
 そうした状況の中での、翁長前知事の死去。これは両陣営にとって、大きな誤算となったと言えよう。佐喜眞陣営にしてみれば、県内に漂う翁長氏への弔いムード、それは、8月11日に開催された県民大会(主催者発表7万人が参加)を見ても明らかだった。逆に、オール沖縄陣営に至っては、今回も翁長氏を擁立する意向だっただけに、後任の候補者を選定しなければいけない。超短期決戦の中で、お互いの陣営共に、頭を抱える中で、急遽浮上したのが、玉城デニー氏の名前だった。

イデオロギーより
 振り返ってみると、故翁長前知事は、以前からこの状況を頭に描いていたのではないだろうか。「イデオロギーよりもアイデンティティー」四年前の県知事選において、翁長氏が提唱した。それを強く感じさせるきっかけとなったのは、2013年11月25日、辺野古移設反対を掲げて当選した自民党国会議員が、公約を撤回し辺野古容認を表明した、その瞬間ではないだろうか。我々県民にとって深く刻まれている、あの、石破氏の後方で無表情のまま座っている5人の県選出の自民党国会議員の姿。沖縄県民の民意を、それこそアイデンティティーを踏みにじられた出来事であった。その後年末には、当時の仲井真弘多前県知事も辺野古埋め立てを承認、県民の怒りは沸点に達した。そして誕生したのが、翁長県知事なのである。
 沖縄県民は、ぶれずに、そのアイデンティティーを大事に、選挙において、ことごとく民意を示してきた。今回の県知事選においても、様々なデマや誹謗中傷、圧力等がはびこる中で、沖縄県民としてのアイデンティティーを老若男女問わず、決して見失わなかった結果が、この8万票もの圧勝ではないだろうか。
 「オール沖縄」は、野党共闘や革新統一といった言葉では括ることはできない。それこそ、保革を越えた、沖縄県民のアイデンティティー誇り、民意の結集なのだ。
 名護市長選後、菅義偉官房長官はこう述べた。「選挙は結果が全てです」と。沖縄県民は、結果を出した、いや、出し続けてきた。今度は、政府がこの民意を尊重し応えるべきだ。

「うちなーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー!」

次呂久勲(JCJ沖縄世話人)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
posted by JCJ at 16:19 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする