2018年11月03日

【メディアウォッチ】 非民主的で無責任なITメディアの改革急げ=鈴木賀津彦

 メディア・リテラシー教育の実践的な研究者として世界的に著名な英国のデイビット・バッキンガム氏が来日し、法政大学市ケ谷キャンパスで10月6日、「『デジタル資本主義』時代のメディア・リテラシー教育」をテーマに講演した。同大学図書館司書課程が主催、JCJなどが共催した。教員や図書館司書、研究者やジャーナリスト、学生ら約100人が参加した。

 バッキンガム氏は講演で、フェイスブックやグーグルなどの巨大IT企業の商業主義的な独占支配のもとにあるインターネットの現状から、デジタルの夢は悪夢に変わりつつあると強調。「サイバーユートピア主義は終焉した」と説明した。
 そこで起きているフェイクニュースやネットいじめや「中毒」、そしてクリックベイドなどが横行する現状を、単なる症状ではなく根源にある問題を見る必要があると解説。規制に抵抗する巨大IT企業が代替えとして示す「メディア・リテラシー」やファクトチェッカーなどの技術的解決策など、断片化された「手っ取り早い」解決ではうまくいかないと批判した。
 「私たちが必要としているのは、フェイクニュースか否かをはっきりさせるための単純なチェックリストなどではなく、それらのメッセージを載せるメディアがいかに機能しているのか、経済的な次元だけではないその仕組みを、より深く批判的に理解することなのだ」と述べる。
 では、どうすればいいのか。まず「インターネットを、水や空気のように私たちにとって欠くことのできない公共事業と認めること。それが民間企業によって運営される場合に、厳正な規制と説明責任が求められ、商業的独占が生じないよう防止策や独占企業の解体がなされるべきだ」とバッキンガム氏は主張する。

 次に「グーグルやフェイスブックのような企業は、そのインフラに載るコンテンツを誰が作っていても、メディア企業とみなされるべきだ」とする。現在、インフラを提供するだけの技術的企業であり、中立的な媒介事業者だと振る舞い、流通するコンテンツに対してはいかなる編集責任も持たないと主張しているが、編集責任を持たせ、ヘイトスピーチやハラスメント発言など、既存のメディア規制の対象にしようと訴える。
 第三は個人情報の利用の問題だ。多くの人は利用規約に同意のチェックをすることが何を意味するのか、ほとんど分かっていない。「自らの個人情報がどのように集められ、いかに活用されているかについて、知る権利と管理する権利を持つべきである」とし、「メディア・リテラシーは人々に対して、変革を求めることこそを教えなければならない」と訴えた。
 バッキンガム氏は広島市などでも講演、福島の原発被災地などを視察した。

鈴木賀津彦

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
posted by JCJ at 14:44 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする