2018年11月06日

【神奈川支部例会】 本土との認識の差を実感 東海大生 沖縄取材体験を報告=保坂義久

神奈川支部では10月6日、神奈川県民センターで例会「若者は沖縄の今をどう見たか」を開いた。

2017年9月、沖縄戦跡のチビチリガマが沖縄在住の少年たちに損壊された事件は、沖縄でさえ戦争体験が若い世代に伝えられていないとして大きな衝撃を与えた。

東海大学文化社会学部広報メディア学科の羽生浩一教授のゼミでは、同年12月に沖縄を訪れ、映像を「歴史記憶を継承する難しさ」というDVDにまとめた。

今回の例会ではこのDVDを視聴し、沖縄取材に行ったゼミのOBと現役学生の話を聞いた。

DVDでは、地元の平和ガイドが、チビチリガマの集団自決と、昨年の損壊事件について解説。平和学習の見学から帰ってきた地元中学生にもインタビューし、沖縄国際大学と琉球大学の学生にも話を聞いた。最近の沖縄ヘイトといえる言説について琉球新報の島洋子経済部長にも取材している。

現場の空気感じる

DVD視聴後、ゼミOBと学生が報告した。今年3月に卒業し、テレビ番組制作の現場で働く阿子島徹さんは、仕事で行う街頭インタビューと沖縄取材体験を比較し、こちらでは10人に質問して1人か2人が答えてくれればいい方だが、沖縄では誰でも答えてくれると本土との違いを語った。

DVDではナレーションを担当し、現在は新聞社系の広告代理店で仕事をしている杉田颯さんは、空襲の被害の大きかった八王子出身、祖母が身内の犠牲に触れたがらないと自分の体験と重ね合わせた。

現在大学4年の寺牛恒輝さんは「友人が左派ヘイトの根も葉もない発言をリツイートしているのを見るとうんざりするが、自分も学ばない前は同じようだった。異なる立場でも互いに耳を傾けるのが大事だと思う」という。

3年生の高橋夏帆さんは、子どもの貧困をテーマにし、子ども食堂を取材した。食堂に入りづらい状況があると報告した。

澤村成美さんは、性的マイノリティーをテーマに決め、パートナーシップ制度について行政などに取材した。実際に辺野古のゲート前では、座り込む人が運び出される状況に驚いたが、作業終了時には互いに「お疲れ様」と声を掛け合うなど、現場でなければわからない雰囲気も感じたという。

中島こなつさんはガマを個人テーマにして調べていた。損壊事件について周囲のほとんどの学生は知らないという。

各自の報告の後、司会の野呂法夫支部運営委員から「様々な集会が開かれるが若者の参加は少ない。どうしたらいいか」と問いかけられた。

若者たちからは、直接話せるよう大学に出向いてほしいとかSNSの活用などの意見が出た。

記者の仕事を語る

後半は沖縄の新聞社でインターンシップ参加した体験を、沖縄タイムスで働いた高橋夏帆さんと、琉球新報で体験した専修大学3年の天野公太さんが報告した。

高橋さんのインターンシップは8月6日から12日間。3日目に翁長知事が亡くなり、あわただしい新聞社内を体験した。

通夜の取材にも同行させてもらったという。どんな緊急事態にも事実確認を疎かにしない新聞の制作現場を体験できてよかったと、高橋さんは語る。

天野さんが身近な人に沖縄に行くと話すと、「プロ市民とかいるんでしょ」という反応が返ってきたという。天野さんはSNSが出現する前の沖縄のイメージはもっと違っていたと指摘した。

天野さんは本土と沖縄との認識の乖離に気づかされたという。東京では米軍は決められたルールを守って訓練していると思われているが、現地へ行って、米軍がルールをも持っていないことを知った。

最後に藤森研支部代表が、JCJ賞資金のカンパを呼びかけた。集会の参加者は51人。

保坂義久

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号
posted by JCJ at 10:29 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする