2018年11月16日

【リレー時評】福岡市が市民団体の贈呈本を拒む=白垣詔男(JCJ代表委員)

 福岡市の市民団体「引揚げ港・博多を考える集い」が出版した体験記を、福岡市教育委員会を通じて市内の全中学校に寄贈しようと申し入れたところ拒否された。理由は「旧ソ連兵や中国人の蔑称が使われているから」。
 同団体は今年6月に「あれから七十三年 十五人の戦後引揚体験記」を出版、若い人にも読んでほしいと福岡県内のすべての高校や大学、福岡市立図書館など約400カ所に寄贈したが同市内の全中学校69校への配布は拒否された。

 同団体の事務局長は「現在は使ってはいけない蔑称だが、時代背景を伝えるため引揚者が書いた体験記を原文のまま使用。注釈と解説などを付けている」としたうえで「当時、なぜこのような差別用語が使われていたのかを教えるのも教育ではないか」と主張したが、市教委は「生徒に用語などを説明しながら読む必要があり、そのまま(中学校の)図書室に置くのは好ましくないと判断した」と同団体の主張には耳を貸さなかった。

 博多港には敗戦後、中国大陸や朝鮮半島から約139万人が引き揚げてきた。長崎県の佐世保港に次ぐ日本最大級の引き揚げ港で、1991年、市民が「引揚げ港・博多を考える集い」をつくり、その歴史を語り継ぎ、引き揚げを通して悲惨な戦争を二度としないよう訴えてきた。同団体は記念碑を建てるよう福岡市に働き掛け、同市は96年、彫刻家、豊福知徳さんに依頼して博多港を望む場所に「那の津往還」と名の付く引き揚げ記 念碑を完成させた。
同団体はその後、同市に「引き揚げ記念館」を建設するよう申し入れてきたが市は難色を示し、ようやく2011年、市民福祉プラザの1階に「引き揚げ関連常設展示場」をつくり、市民が寄贈した約2600点のうち引き揚げの際使われた腕章やリュックサックなどを展示するようになったが周知が不十分で、展示場を知る人は少ない。

 また、別の市民団体が主催して毎年開いている「平和のための戦争展」についても市は「戦争法廃止、原発反対など戦争展の趣旨にそぐわない内容の主張が政治的だ」との理由で後援を拒否している。同市は「戦争と平和の問題」には後ろ向きと言わざるを得ない。
 「中国人への蔑称」は、九州大学生体解剖事件を題材に取った遠藤周作の名作「海と毒薬」には、何の注釈もないまま使われているが、中学校の図書室で読むことができるようだ。
 そうしたことから、市民団体が発行した引き揚げ体験記を同市が贈呈受け取りを拒否した根底には「平和と民主主義」の実現に消極的で日本の近現代史を大事にしない安倍政権に通底するものを感じてならない。
 なお、福岡市の現市長は自民党福岡県連の重鎮、麻生太郎副首相・財務相の大きな支援を受けているというか、麻生さんの言いなりの市政運営をしているという指摘が多い。
posted by JCJ at 10:09 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする