2018年12月04日

【リレー時評】「元徴用工」判決 日本社会を逆照射=吉原 功(JCJ代表委員)

 韓国大法院(最高裁)は10月30日、元徴用工4人が新日鉄住金(旧日本製鉄)に対し損害賠償を求めた訴訟の、上告審で控訴審判決を支持し同社に1人当たり1億ウォン(約1千万円)の支払いを命じた。この判決が日本社会の現在を逆照射している。
 判決に対し安倍首相は「1965年の日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決している。国際法に照らしてありえない判断」と言い、河野外相は駐日韓国大使を外務省に呼びつけ抗議、「日本企業に不利が生じないよう、韓国政府が必要な措置をとるよう要求」した。テレビも政府に呼応して「異常な判決」を言い立て、「過激な労働組合を許しているから」とか「日本企業は韓国から引き上げよ」などと説明・主張するコメンテーターまででてきた。

 さすがに新聞はもう少し冷静だが、日韓関係を悪化させるものとする点では一致しているとみていいだろう。過去の植民地支配への反省、否むしろ認識の欠如、その犠牲者への無関心も、一部を除いて、共通している。
 日韓請求権協定は両国の国交正常化交渉に伴って結ばれたものだが、判決はこの点に関して次のように指摘している。「交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を根源的に否定した」、したがって「強制動員の請求権が協定の適用対象に含まれたとは言い難い」と。
 また原告は「朝鮮半島が日本の不法で暴圧的な支配を受けていた状況で、労働の内容や環境をよく知らないまま日本政府と日本製鉄の組織的な欺きにより動員され」徴用工になったのであり、「生命や身体に危害が及ぶ可能性が非常に高い劣悪な環境で、危険な労働に従事した」と説明している。

 一方、安倍政権は「徴用工」という従来の呼称を「旧朝鮮半島出身労働者」と言い換えはじめた。今回の原告は徴用ではなく「募集に応じた人々」だからだという。戦争による労働力不足を補うために朝鮮に労働力の提供を割り当て本格的な調達をはじめるのは39年からだった。確かに当初は「募集」、ついで「官斡旋」といい、国家総動員法に基づく国民徴用令が朝鮮に適用されたのは44年9月以降である。
 しかし、いずれにしても天皇制ファッシズム下のことであり、「判決」が指摘しているような「募集」状況、労働実態であったことに変わりはない。11月13日付東京新聞「こちら特報部」で田中宏氏が指摘しているように「労働者」という言葉は「企業と個人の自由な労働契約をイメージ」させる。戦時日本があたかも平時と同じような時代と思わせる戦略の一端であろう。

 韓国政府が認定した元徴用工は22万人いて、今後、提訴が相次ぐ可能性があるという。松代大本営の造営にも朝鮮から7000余の人々が動員され強制労働に従事させられた。その歴史館に来て「お金を払ったのだから問題ない」「強制労働とはいえない」という若者が多いと聞く。
 近現代についての歴史認識を正していきそれにふさわしい対応をしていかねば日本はアジアの孤児になってしまうだろう。松代の歴史を掘り起こし展示活動に寄与しているのは高校生・卒業生たちであることも付言しておこう。
posted by JCJ at 09:31 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする