2018年12月06日

【映画の鏡】『区議選に出たい』─帰化した中国人が、歌舞伎町で民主主義を訴える=今井 潤

 中国から日本にやってきて、新宿歌舞伎町で外国人観光客を相手に飲食店や風俗店の案内をつとめてきた李小牧(りこまき)さん(58)は新宿区議選挙に出ることを決意した。そして2015年2月日本国籍を取得して、旧民主党・海江田万理衆院議員の推薦を受けた。
 この李さんの選挙活動を2年間取り続けたのは同じ中国人の邢菲(ケイヒ)監督。ノーコメント、実音のみのドキュメンタリー作品だ。

 李さんは歌舞伎町の従業員や外国人はなぜ差別を受けているのか、日本の若者はなぜ自分の選挙権を大事にしないのか、真剣に選挙の意味や日本の社会問題を考えていた。
 実際に街頭で訴えると、「中国人が何を?」「中国へ帰れ!」など冷ややかな声をかけられ、演説を聞くこともない。おばさんからは「中国人は声が大きく、自分たちの主張だけを言うので嫌いだ」といわれる始末。同じ旧民主党の候補者と街宣場所での対立もあり、思うような選挙活動もできない。それでも旧民主党の公認をもらい、ポスターにシールを貼ることができた。

 投票日には1000票を超える得票を得たが、当選はできなかった。李さんは「自分は中国人でも日本人でもある。私が当選したら、日本は民主主義だということがわかる」と笑顔で話し、しぶとく日本で政治家を目指す。邢菲監督は中国専門の番組制作会社テムジンで中国に関するテレビ番組や日本の震災関連のドキュメンタリーなど20本以上制作し、2013年に退社し、イギリスへ留学、本作が初監督作品。
(公開は12月1日(土)から東京ポレポレ東中野)

今井 潤

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年11月25日号
posted by JCJ at 13:27 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする