ドキュメンタリー映画「最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争」の日本語版完成記念上映会が12月初旬に都内であった。ギリシャ人が監督したこの映画は、フランス、ドイツ、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、アイルランドなど6カ国13都市で4年間取材し、水道事業の民営化に至った経過や、それに失敗して再公営化で立て直した過程などを明らかにしている。
日本でも水道事業の民営化論が高まっていたこともあって、NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)や全水道労組などが中心となりプロジェクトチームをつくり、8月ごろから日本語制作をスタートさせた。作業にかかる費用100万円はクラウドファンディングで調達した。
PARCの内田聖子共同代表は「8月に早くも100万円を突破し、11月に214万円にも達しました。予想外にお金が集まり、支援していただいた方に感謝しています」と語った。
さて映画の中身だが、およそ2つに分けられる。
財政再建計画の一環として水道事業の民営化を欧州連合(EU)から強要させるギリシャ、ポルトガル、アイルランドが展開する反対運動がその一つ。例えばOECD(経済協力開発機構)加盟国で唯一、水道料金は一般税を通じて徴収していたアイルランドでは、新料金設定に抵抗した市民は2014年11月に首都ダブリンで20万人反対デモを実施した。
もう一つはパリ市やベルリン市で起きた水道料金の急速なアップや運営に関する情報の非開示問題などから再公営化を果たした活動(1面参照)だ。25年間の民営にストップをかけて、10年に再公営化したパリ市は、世界の水道事業の再公営化の流れをつくる大きなきっかけになった。
一方、日本は改正水道法が成立し、民営化に走り出した。欧州だけでなく米国でも再公営化が急増しているというに。映画は民営化に前のめりの浜松市など11カ所で上映が決まっている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号