2018年12月27日

【国内政治情勢】 森友スクープ記者が寄稿 自殺職員の動機解明に全力 「国と大阪府の事件だ」=相澤冬樹

12月20日号週刊文春に手記を発表した元NHK大阪報道部の相澤冬樹さんに(56=現大阪日日新聞記者)森友学園疑惑などについて、寄稿してもらいました。


 森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である。こう言うと違和感を持つ人もいるかもしれないが、おかしなことをしたのは学園よりむしろ国と大阪府だ。まずそこから語ろう。

 発端は、森友学園の籠池泰典理事長(当時)が、小学校を作りたいと思ったことだ。学園は幼稚園を運営していて、そこで教育勅語を園児に暗唱させるなど、自らの思想信条に基づいた独自の教育を行っていた。その教育を賛美する政治家も数多いた。しかし園児たちは卒園すると多くは公立の小学校に入る。そこで園児たちの多くは森友学園で学んだことを忘れていく。籠池氏はそれが残念だった。そこで、園児たちの進学先として小学校の設立を目指し、それに賛同する保護者たちも多かった。これはおかしな話ではない。思想信条の自由は日本国憲法で保障されているし、学校を設立したいと考えるのも自由だ。求められる規準を満たしているならば。

 ところが審査にあたる大阪府の私立学校審議会は、学校が資産や教員確保などの面で規準を満たしていないと考え、認可保留の判断を出した。妥当な判断だ。これに対し事務局を務める大阪府私学課が、1カ月後に臨時の審議会を開くよう求め、1カ月後に条件付きで「認可適当」の判断を出してもらったのである。なぜ行政がそこまでしてこの小学校を認可しようとしたのか?これが第1の謎だ。

 さらには国有地の問題だ。小学校を建てるには土地がいる。森友学園は豊中市内の国有地を入手したいと考えた。売却交渉にあたるのは財務省近畿財務局だ。この土地はその前に大阪音楽大学が購入を望んだが、5億円から値を上げて数億円を提示しても財務局は売らなかった。ところが森友学園には地中のごみの撤去費用などを名目に鑑定価格から8億円余りも値引きして売ったのである。籠池氏が強引に値引きを迫ったと言う人もいるが、大阪人なら買い物にあたって「まけてや」と値引きを求めるのは普通のことだ。それに応じず適正価格で売るのが公務員だが、この件だけなぜ大幅に値引きして国有地を売ったのか?それが第2の謎だ。

 この2つの謎に、小学校の名誉校長が安倍昭恵首相夫人だという話が絡んで、政権の関与、安倍晋三首相自身の関与の有無が国会で議論されてきた。私にとって森友事件は、かつて世間を揺るがしたロッキード事件やリクルート事件に匹敵すると考え取材を進めてきた。

 近畿財務局は国有地の売却前、森友学園側に「いくらまでなら出せますか」と上限額を聞き出していた。学園側が求めたのではなく売る側の財務局が聞き出したのである。学園側は1億6000万円と答えている。これに対し財務局の担当者は「その範囲に収まるといいですね」とまで言っている。これは事実上「その範囲に収めます」という意味だろう。実際、売却額は1億3400万円で、まさに「その範囲に収まっている」のである。国民に損害を与えるような不当な値引きをした「背任行為」を強くうかがわせる話だ。私はこれを去年の7月26日に特ダネとして出した。

 ところがこれに東京の報道局長が激怒し、私の上司だった大阪の報道部長に電話をかけてきた。たまたまその時部長の前にいたので、電話口から「聞いてない」とか「なんで出したんだ」という怒声が聞こえてきた。電話を切った後、報道部長は「あなたの将来はないと思えと言われました」と苦笑いした。その瞬間、それは私のことだと感じた。実際、今年の人事異動で私は記者を外され非制作部門に移された。私は記者を続けるため、森友事件の取材を続けるためNHKを辞め、「何のしがらみもない」と社主が語る大阪日日新聞に移った。

 取材の最大のテーマは、すでに書いた2つの謎を解明し、背後に何があったのかを明らかにすることだ。しかし真相がそう簡単にわかるわけはない。引き続き粘り強く関係者への取材を続け、いつかは真相を解明して世に伝えたい。
 だが、それより先に解明せねばならない取材テーマがある。事件の渦中で自ら命を絶った近畿財務局の職員Aさんのことだ。彼は土地取引に深く関わった訳ではないが、その後の公文書改ざんに不本意にも巻き込まれ、苦悩の末に命を絶った。なぜ彼が追い込まれなければならなかったのか、その謎を解き明かさねば、Aさんは浮かばれまい。まずはここに力を注ぎたい。

 私はこのたび森友事件についての本を出した。題して「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由(わけ)」事件の本質と、私の取材手法、そしてNHKでの報道の内情を書いている。
 作家の井上ひさしさんは「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに そしてゆかいなことは、あくまでゆかいに」という言葉を残している。この本もその精神で書いたつもりだ。安倍政権を支持する方にこそぜひお読み頂きたいと思っている。
posted by JCJ at 10:45 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする