2018年12月29日

【内政】 世界に逆行 民間任せ 外資参入 水道料金高騰へ 市民をないがしろ「改正法」=橋詰雅博

 改正水道法が成立した。これで水道事業の運営権を自治体から企業が買い取ることができる。この「コンセッション方式」は1900年ごろから世界各国に広がったが、2000年以降は水道事業を再び公営化する都市が急増している。水道料金の高騰や水質悪化などが原因だ。世界が再公営化に向かっているのに、日本はそれに逆行する形だ。民営化でどうなるのか。全国の水道職員らでつくる全日本水道労働組合の辻谷貴文書記次長(45)に聞いた。

――水道法を政府が16年ぶりに改正したのはなぜですか。
 人口減による給水収益の減少、老朽化した水道管更新費用の増大、水道職員の不足などが背景にあります。三重苦≠ェ長く続いてきたから水道事業に企業を参入させてしのごうというわけです。その手段として導入する「コンセッション方式」は、自治体には管理監督責任が残りますが、運営権はそれを買った企業に移り、水道料金は直接企業が受け取ります。契約期間は20年以上と長期にわたり、業務のやり方は企業にまかされます。

急増する再公営化
 ――ところが欧州などでは民営化の失敗が相次ぎ、水道事業は再公営化が潮流になっています。
 オランダのNGOトランスナショナル研究所によると、2000年から16年で、世界33カ国の267都市で、水道事業が再び公営化されています。
 例えばパリ市。水メジャー≠ニ呼ばれるスエズとヴェオリアの2つの多国籍企業が、85年から09年までの25年間、水道事業を運営してきました。この間、不透明な会計による利益隠しや必要な再投資を怠るなど不祥事が発覚。しかも水道料金は25年間で3・5倍にもなりました。料金が大幅アップしたのは株主配当や役員報酬、借入金の高い利子支払いのためです。契約期間が終了した後、高騰する水道料金が主な理由で、10年に再公営化に。翌11年には株主配当などが不要になったので、料金を8%値下げしました。
 ドイツのベルリン市も14年に再公営化しましたが、企業側から運営権を買い戻すため13億ユーロ(約1671億円)も企業側に支払いました。今年の7月に水道事業民営化の先進国・イギリスを訪ねましたが、民営化の時の「料金が下がる、水質がよくなる、サービスもよくなる」という約束が破られたと市民の怒りはおさまりません。労働党は「水道再公営化」の公約を掲げ、国民の7割が支持したと表明しました。

 ――欧州で商売がしづらくなった水メジャーなどは、アジアにターゲットを絞っていますね。
 スエズとヴェオリアは12年ごろからタイやシンガポール、フィリッピンなどアジア各国に進出しています。スエズはマカオ、ヴェオリアは日本にそれぞれ拠点を持っています。ヴェオリア日本法人などは浜松市の下水道事業の20年間運営権を25億円で手に入れました。

ノウハウ持つ外資
 改正水道法の成立で、水メジャーはいよいよ日本の水道事業市場に参入する可能性は高いです。浜松市の水道事業への参入に意欲を示しています。国内の水事業関連企業は水道事業運営のノウハウはありません。外資に頼るしかなく、水メジャーなどと組んで運営に乗り出すかもしれません。いずれにしても外資が主導権を握ることになります。

 ――日本でも民営化されたら、欧州のような水道料金の高騰などが起り得るのでしょうか。
 運営するのは企業ですから、株主配当や役員報酬、借入金の利子払いなどが生じます。これらの資金をねん出するには利益を上げる、施設のコストの削減が考えられます。となると水道料金の値上げ、コスト削減では例えば品質は落ちるが、価格が安い水道管を使うケースが出てくるかも。料金を引き上げたうえに仕事の手抜きで、施設の安全性は心もとないという状況に陥りかねません。
 また、地震や豪雨などに襲われて水道施設が壊れた場合、災害復旧の最終的な責任は管理者の自治体が負います。コストを切りつめたい企業は、責任がないなら災害に備えた投資をしぶりますので、災害時に被害がより大きくなる恐れがあります。

大都市進出を狙う
 ――企業が狙いそうな都市は。
 事業規模が大きくないと、儲かりませんから人口50万以上の都市が進出対象でしょう。大都市の東京都や大阪市を本命視≠オているはずです。大阪市は運営権の売却額を4000億円と試算しています。

 ――宮城県を始めいくつかの自治体は導入に前向きですが、市民はどうすればいいですか。
 運営権を企業に売り渡し、途中で問題が起きた場合、再公営化するには巨額な違約金の支払いが必要です。ベルリン市のケースは、その見本です。民営化に流されず、公営維持を訴え続け、方策を考えるべきです。

聞き手 橋詰雅博

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:35 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする