2018年12月30日

【今週の風考計】12.30─年末、本田靖春と大江千里に魅せられて

「除夜の鐘」が鳴る前に、後藤正治『拗ね者たらん─本田靖春 人と作品』(講談社)を読み終えた。小生には、戌年の掉尾を飾る感動の本となった。
ノンフィクション作家・後藤正治が類い稀な織職人となって、孤高のジャーナリスト本田靖春の名作を縦糸に並べ、横糸に彼の作品群を編集した伴走者や交友関係を選び、2004年12月4日に閉じる71年の生涯を、縦糸・横糸、縦横にあやつって丹念に織りあげた壮大なタペストリーだ。

本田は、日本が歩んできた「戦後の原液」への思いを胸に、「由緒正しい貧乏人」の目で、社会的事件や人物像の真実を掘り起こし、世に問うてきた。
「スクープ記者の陥穽」を描いた代表作『不当逮捕』の「あとがき」で、本田は、<戦いとったわけでもない「言論の自由」を、(中略)まるで固有の権利のように錯覚して、その血肉化を怠り、「第四権力」の特権に酔っている間に、「知る権利」は狭められて行ったのではなかったか─。>と書いている。

今年は没後14年になる。モリ・カケ問題から、公文書改ざんなど、国民の「知る権利」は、脅かされ続けている。彼の仕事は今でも噛みしめるに充分以上の意味を持っている。

さて最後は、9月5日発売の大江千里のジャズアルバム『Boys & Girls』(Sony Music Direct MHCL30535)も、おすすめである。今や彼も58歳、ニューヨークを拠点に、ジャズピアニストとして活躍、アーティスト活動は35周年を迎えた。あの鼈甲ブチ眼鏡をかけ黒い丸帽子をかぶって弾くピアノが、まるで歌ってでもいるように鳴る。
輝きを放つ新曲「A Serene Sky」や「Flowers」もいいが、やはり彼の代表曲「ありがとう」のジャズピアノに惚れる。末尾ながら、皆さん、よいお年をお迎えください。(2018/12/30)
posted by JCJ at 11:43 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする