2019年01月03日

【沖縄リポート】 カミソリの刃がつく有刺鉄線を張る=浦島悦子

 大浦湾は荒れていた。磯に打ち付ける高い波しぶきが見える。12月7日、辺野古埋め立て土砂を積んだ運搬船4隻と陸揚げ用台船1隻が大浦湾に到着。仮桟橋として使われているK9護岸から週明けにも陸揚げされるはずだったが、船は護岸に近づけない。海神≠燗{っているようだ。

 辺野古埋め立ての是非を問う県民投票(2月24日実施)を前に、何としても年内に土砂を投入したい安倍晋三政権は、行政不服審査法を悪用して埋め立て承認撤回を効力停止・工事再開したものの、埋め立て土砂搬出港(本部港塩川地区)が台風で破損し行き詰まった。そこで隣接する名護市安和の民間企業・琉球セメント屋部工場の桟橋の使用を密かに準備し、12月3日朝、土砂搬出を開始した。県民の抗議行動を想定して、事前に剃刀のような刃が付いた有刺鉄線を張り巡らす用意周到さだった。琉球セメントは沖縄県内唯一のセメントメーカーで、かつては宇部興産の子会社だった。

 沖縄県は赤土流出防止条例違反などで搬出停止を求め、同日午後、作業は一時止まったが、政府は搬出方法を変えて5日夕方、作業を再開。運搬船は辺野古へ向かった。

 あらゆる違法・脱法、アクロバット的な「奇策」を弄して民主主義と地方自治を押しつぶそうとするこの政権は、異様としか言いようがない。

 そしてそれは辺野古にとどまらない。作業再開の一報を、私は、与那国・石垣・宮古・伊江島・高江・辺野古の県内6市民団体が上京し、合同で行った「軍事拡大に反対する」防衛省交渉の席で聞いた。各島々でも同様のやり方で米軍・自衛隊基地の建設や強化が進み、住民自治や暮らしが脅かされている。

 防衛省は係長以下の対応で、私たちの要請や質問にまともに答えられず、「沖縄をバカにするな!」と声が飛んだ。しかしそれでも、今回、島々が海を越えて共同の行動を起こした意義は大きい。米日軍事一体化の中、分断支配・個別撃破されるのではなく、住民同士が手をつなぎ、一体となって軍事拡大を止めていきたい。

 14日土砂投入を宣言した政府が「バケツ1杯でも」土砂を入れ、既成事実を作るべく、強行したとしても、そんなことで県民があきらめると思ったら大きな間違いだ。

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:48 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする