2019年01月04日

【リアル北朝鮮】 米、金委員長の側近3人を制裁へ 人権問題に絡めて=文聖姫 

「表では両国間の敵対と対決の歴史に終止符を打とうと確約し、裏では対話の相手の尊厳と体制をこき下ろし制裁圧力策動に狂奔する米国の二重基準」

労働新聞2018年12月11日付論評は、米政府が「人身売買被害者保護法」に従った対北朝鮮制裁を続けることを決定(同年11月29日)したことに反発し、こう指摘した。

労働新聞が論評を掲載した前日の10日、米財務省は北朝鮮の人権蹂躙に責任があるとして、3人の北朝鮮幹部を制裁対象とした。崔龍海朝鮮労働党副委員長兼組織指導部長、鄭京沢国家保衛相、朴光浩朝鮮労働党副委員長兼宣伝扇動部長の3人。  

いずれも金正恩朝鮮労働党委員長の側近たちだ。特に崔副委員長は、金永南最高人民会議常任委員会委員長に継ぐナンバー3だが、実質的には金委員長の右腕とされる。

 また、崔副委員長が部長を兼務する組織指導部は、朝鮮労働党内において組織生活指導を担当し、朴副委員長が部長を兼務する宣伝扇動部は思想生活指導を担当する。

この両部署が、幹部を含めた党員の生活全般を統制している。組織指導部は党員の検閲も担当するといわれる。鄭氏が大臣を務める国家保衛省は秘密警察≠ニされ、スパイや反体制派を摘発する部署だ。つまり制裁対象になった3人が長を務める部署は、北朝鮮の人々を統制・監視する機関という共通点がある。

 今回の米財務省の措置に対し中国の陸慷外交部報道官は11日のブリーフィングで、「情勢を緩和するのに助けとなる事をすべきで、むしろ相反する事をしてはいけない」と米側を牽制した。膠着状態に陥っている米朝関係をさらに悪化させることへの懸念を示したものといえる。

 北朝鮮からは12日現在、反応は示されていないが、側近中の側近を制裁対象にされた金委員長が黙っているとは考えにくい。

文聖姫(ジャーナリスト、博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号
posted by JCJ at 10:25 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする