2019年02月02日

【リレー時評】正念場を迎える出版崩壊の危機!=守屋龍一(JCJ代表委員)

  1月7日、朝日新聞朝刊に掲載された、宝島社の見開き30段広告─「嘘つきは、戦争の始まり。」には衝撃を受けた。青空を背景に、油まみれで真っ黒な水鳥の嘴の先に、簡潔なフレーズが白抜きで刻まれている。
〈…陰謀も隠蔽も改ざんも粉飾も、つまりは嘘。/ 世界中にこれほど嘘が蔓延した時代があっただろうか。…嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。〉

  その通り! 出版界も例外ではない。ヘイト本やコピペ本、フェイク記事や事実も確認しない差別論文・寄稿の載る雑誌がまかり通る。
  直近では女子大生の尊厳を傷つける、扇情的な粉飾だらけの記事を載せた「週刊SPA!」(扶桑社)がある。昨年は「新潮45」10月号が典型だ。掲載された、安倍応援団の一人・小川榮太郎論文は、犯罪である痴漢を容認するなど、文字にするのも憚られる内容。「常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」との社長声明で、休刊が決まった。しかし〈出版社の社会的責任〉についての説明は、いまだにない。

  百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)も、Wikipediaなどからのコピペ疑惑≠ェ、本文やコラムなどの記述に数多くみられ、剽窃ではないかと指摘されている。ネット上では広く知られているが、幻冬舎は沈黙、新聞・TVも報じない。

  こうした憂うべき事態にある出版界だが、もっと深刻な状況が迫る。昨年の年間売上げ1兆2800億円、1996年のピーク時2兆6564億円の半分以下。そこへ10月からは消費税10%の大波が襲う。
  出版物への軽減税率は適用されず、政府側は「有害図書排除の仕組みの構築状況などを勘案のうえ、引き続き検討する」という。この「有害図書」とは何か。その基準や「出版倫理コード」の導入をめぐり、議論が続く。

  深刻なのは、出版流通の実態だ。雑誌の落ち込みにより、取次の扱う業量が急減し、出版運送の採算割れで撤退の動きが強まった。慌てて運賃値上げしたものの、運送危機は回避できていない。
  流通改善に向け、日販とトーハンは、双方の物流拠点を相互に活用し、統廃合も視野に協業体制を強化する協議が始まっている。
  郊外の雑誌や書籍の出荷場では、ベトナム人をはじめ多数の外国人労働者が、劣悪な労働条件で働いている。仕事量も減り残業代も出ず、彼らの契約破棄、配置転換など、4月から施行される「入管法」にも関わる、深刻な事態が進んでいる。

  書店はどうか。デパートやスーパーに出店する大型書店も、高いテナント料などで赤字が続き、日販・トーハンに買収され、直営店化される事態が進む。しかもアマゾンが、再販制を無視した割引販売を、ネットで全国展開している。書店が倒産するのも無理はない。
  出版崩壊の危機に、どう立ち向かうか、私たちは正念場を迎えている。
posted by JCJ at 11:38 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする