2019年03月04日

【メディアウォッチ】 菅官房長官の報道恫喝 官邸になめられた大メディアと記者会 明らかな言論弾圧だ 委縮・自己規制はね返せ=編集部

 「取材じゃないと思いますよ。決め打ちですよ」。菅義偉官房長官は2月12日の衆院予算委員会で、語気を強め「東京新聞の特定記者」の質問をこう断定した。会見はネット動画で配信されており「事実に基づかない質問は、誤った事実認識を拡散される恐れがある」と、首相官邸の内閣記者会への申し入れの正統性を強調したのだ。国民民主党の奥野総一郎氏が質問で「民主主義国家としてあってはいけない」と追及したのに答えたものだが、記者会見の質問を封じる恣意的で言いたい放題の発言が、国会で平気でまかり通ってしまうこと自体を深刻に受け止めるべきだ。

 ところが今回も、政権による言論弾圧と言っても過言ではない発言が国会でなされたにもかかわらず、マスメディアの反応はとても鈍かった。官房長官答弁を正面から批判はせず、むしろ東京新聞に「9回ほど抗議した」という菅氏の言い分を伝えるにとどまる。こうした当事者意識の薄いメディアの報道姿勢の積み重ねが、今回の事態を招いていると言えよう。

 首相官邸報道室長名で内閣記者会に、東京新聞の特定記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定し、文書で申し入れたのは昨年12月28日。特定記者とは、官房長官会見でこの間しつこく質問してきた望月衣塑子記者のことで、記者会は「つっぱねた」とされるが、こうした不当な申し入れがあったことは直ぐには報じられず、2月1日になってから情報誌「選択」が電子版などで伝えたのが初報だ。その後、日本新聞労働組合連合(新聞労連)が抗議声明を出したのをきっかけに、新聞やテレビで報道され始めた。JCJも8日に報道の自由の保障を求める声明を発表した。

 国民の「知る権利」に支えられて取材活動をする記者たちが、世論に訴えることなく、この間の「一強化する権力」と各社がばらばらに対峙するだけでは、官邸になめられるのも必然ではないのか。2014年末の衆院選の際に、自民党が解散前日に在京テレビ各局に「報道の公平性確保」を求める文書を出した時も同じだった。テレビ各局は受け取った時点で報道しなかった。各局の対応に疑問や、あまりに鈍感だと批判も出たが、それ以来、権力側からのさまざまな圧力にメディア側が自粛する傾向が徐々に強くなってきている。

 東京新聞とて、官房長官が言っている「9回」もの抗議を報じることなく、静観してきていることは問題だ。気に入らない質問者を排除しようとする政権の狙いを甘く見ずに、不当な対応ぶりをその都度批判的に報じていくことが求められている。
 さらにひどくなった報道現場の委縮、忖度、自己規制をはね返し、会社の枠を超えた地道な取り組みをしていきたい。

(編集部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
posted by JCJ at 13:16 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする