2019年03月06日

【リレー時評】日本のメディアは連帯感が不十分だ=隅井孝雄(JCJ代表委員)

 昨年12月26日の内閣官房長官記者会見で東京新聞望月衣塑子記者が「辺野古に赤土が投入されているのは、埋め立てが適法に進んでいないことを意味するのではないか、政府としてどう対処するのか」と質問したことに対し、「事実誤認だ。埋め立ては適法だ」との官房長官答弁が行われた。その2日後、12月28日、上村秀紀官邸報道室長名の要請書が内閣記者会に対して発せられた。
「東京新聞の特定記者による事実誤認の質問や問題行動が繰り返されている、官房長官会見の意義が損なわれる」として、自粛を要望した。記者会側は「記者の質問は制限できない」と応じたという。

 特定の記者とは望月記者であることは明白であり、彼女の質問の封殺と、官邸記者クラブからの排除を意図したとみられる。これまでにも望月記者の質問に際して官邸報道室長が数秒ごとに、「簡潔にお願いします」と制止することが常態だった。
 この事実が重大な問題をはらんでいるとみた新聞労連が「首相官邸の質問制限に抗議する声明」(2/5)を発表したことで、官邸による言論封殺の動きが初めて明らかとなった。声明は「会見において質問をぶつけ、為政者の見解をただすことは、記者の責務であり、こうした営みを通じて、国民の“知る権利”は保障される」と表明している。声明をきっかけに朝日新聞、毎日新聞、共同通信、琉球新報、赤旗などが次々に記事にして問題が広がった。

 一連の報道を読んで私が思い起こすのは、昨年11月の米トランプ大統領とCNNジム・アコスタ記者の確執だ。昨年11月7日の会見で移民問題やロシア疑惑を追求しようとしたアコスタ記者から、トランプ大統領はマイクを取り上げて質問を封じ、記者証をも取り上げて、ホワイトハウスへの立ち入りを禁じた。
 CNNは「記者証取り上げに異議を唱えなければ公職者を取材する記者の熱意をくじくことになる」と表明した。アメリカの主要メディア(一部ネットメディアも含む)13社がCNN支持に立ち上がったが、その中には、トランプ政権支持の論調を持つFoxニュースが含まれていた。Foxニュース 社長ジェイ・ウォレス氏は「記者証を攻撃の武器とすることは認められない。自由な報道へのアクセス、開かれた意見交換を支持する」(2018.11.15)との声明を発表した。そして9日後、18年11月16日、ワシントン連邦地裁はアコスタ記者への記者証返還を命じた。

 官邸報道室長の内閣記者会への「要望書」は18年12月28日に出されたが、明らかになるまでに一か月以上かかった。また安倍政権寄りと見られている読売新聞、産経新聞は報道していない。アメリカと比べると、言論の自由、知る権利について、日本のメディアの連帯感が不十分であるために、いま一歩鋭さに欠けているのは残念だ。 
posted by JCJ at 11:44 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする