2019年03月24日

【今週の風考計】3.24─梶井基次郎<檸檬忌>と春霞の甲斐路の旅

今日24日は<檸檬忌>だと気づいた。梶井基次郎が今から87年前、31歳の生涯を閉じた3月24日を偲んで命名されている。
思い出すのだが、筆者が若かりし頃、魅了された高村光太郎の<レモン哀歌>にある「トパーズ色の香気が立つ」檸檬を、梶井基次郎は、「私は埃っぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。…(略)丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た」と、代表作の短編『檸檬』で表現した。強烈な仕掛けに、何か恐ろしく不安な気持ちになったことが忘れられない。

3日後の27日は<さくらの日>だそうだ。3×9(さくら)=27の語呂合せだという。<さくら>といえば、これも梶井基次郎の『櫻の樹の下には』が、すぐ思い浮かぶ。
『檸檬』から3年後の作品だが、あの有名な冒頭の一文、「櫻の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」から始まる、薄気味悪いショートストーリーには、ど肝を抜かれた。爛漫と咲き乱れている櫻の樹の下に薄羽かげろうの屍体が満ちているという。
 しかも「今こそ俺は、あの櫻の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑めそうな気がする。」と、最後の1行を締めくくる。この神経の強靭さと繊細さ、20年後に坂口安吾が『櫻の森の満開の下』で、受け継ごうとしたのも頷ける。

さて先週、桜が三分咲きの甲斐路を、身延線を使って旅をした。久遠寺の枝垂れ桜も蕾のまま、奥之院へのロープウェイ下には群生するミツマタが、レモン色の花で山肌を覆いつくす。
武田信玄の隠し湯・下部温泉の源泉館では、31℃の低温泉浴20分、それを2回繰り返す初めての体験。夕食にはヤマメの塩焼きをあてに、山梨の銘酒「春鶯囀」大吟醸を汲む。ここには『山椒魚』で有名な井伏鱒二さんも投宿している。
翌日は信玄が建立した甲斐善光寺へ。金堂天井の鳴き龍とお戒壇巡りを体験。東南に櫛形山、その上には富士山、西へと目を向ければ、まだ雪をかぶる鳳凰山から甲斐駒ヶ岳へ続く山並みが一望できる。3日ほど歩いた甲斐路は春霞に包まれていた。(2019/3/24)
posted by JCJ at 13:25 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする