開幕まで500日を切った東京五輪の晴海選手村建設をめぐり住民訴訟が起きていることを本紙でも2、3回取り上げた。33人の都民が大手デベロッパーに9割以上の値引きで都有地を売却したのは違法であり、小池百合子知事らに損害賠償の請求を都に求めたのである。東京地裁での口頭弁論は、2月下旬に行われた裁判を含め5回を数えた。
これまでの審理で、廉価な売却額について、都側の代理人は「オリンピック選手村という特殊事情」で決めたと主張している。ところが肝心のオリンピック要因≠フ中身になると、説明を渋っているというより言わないのだ。売却額の算出根拠である日本不動産研究所の調査報告書の全面開示も拒否している。傍聴者は理解しがたく、オリンピック要因という言葉だけが頭に残る。
そもそもこの13・4fの土地は、防潮堤の外側にあり、住宅を建てられなかった。そこで都は2・5b盛り土した上で道路、下水道など540億円かけてインフラ整備した。それなのに約130億円で売却したのである。完全な原価割れだ。
異様なのは売却額だけではない。他にも都はデベロッパーに優遇措置を与えている。
○大会中、選手村建物を都などに貸したデベロッパーは賃料を受け取る。
○大会終了後、選手村で使った1万5000台のエアコンや4900台のユニットバス、3900台の給湯器、3900戸分の内装などはマンションに改装するため取り外されるが、その費用は都が負担。金額を小池知事は「数百億円かかる」と発言している。
○土地所有権の移転は、マンション建築の完了確認後とされている。完了の最終期限は「平成36年3月末」だから、所有権移転時までは固定資産税を支払わなくていい。
○譲渡価格の9割の支払いは建築完了後だ。
原告代理人は「このような歪な権利関係は、公共の財産の処分としては不自然」という。
ナゾは深まるばかり。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号