沖縄県名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票は2月24日に開票が行われた。投票率は52・48%と過半数を超えた。最も多かった「反対」は有効投票数の72%を超え、43万4273票に達した。これは全投票資格者(有権者)の37・6%に当たる。5市の市長が一時不参加を表明する事態があったが、曲折を経て全県実施が実現した。
23年ぶりの沖縄県民投票は歴史的な成功を納めた。それでも工事を止めることができていない。政府は県民投票告示後も工事を続行し、反対の民意が示された翌日も工事を強行し、現在に至っている。
◇
3月1日、玉城デニー知事が安倍晋三首相と面談した。投票結果を伝え、工事中断と、日米両政府と県の3者協議機関の設置を求めた。しかし、ゼロ回答だった。
国会では連日、野党が政府の姿勢を追及し批判を続けている。しかし、首相らは「普天間飛行場の危険性除去のため」と繰り返し、民主主義否定、沖縄差別の姿勢をあからさまにしている。
埋め立て工事の土砂投入が始まってから3カ月が過ぎた。大浦湾の海流を変える新たな護岸の建設も始まり、25日には二つ目の区画に土砂投入を開始する方針だ。かけがえのない自然が圧殺されつつある。
大浦湾に広範囲にわたって軟弱地盤があることを、ようやく政府が認めた。海面から90メートルもの深さの部分もあり、地盤改良は極めて困難だ。砂ぐいを7万本以上打ち込むとしており、新基地完成まで13年、工費は2兆6500億円に達すると県は試算している。このまま進めても、十数年も普天間飛行場の危険が放置される。
さらに、普天間飛行場返還には、緊急時に民間の長い滑走路を使用するという条件もある。那覇空港を明け渡すことを意味し、事実上不可能だ。結局、新基地が完成しても普天間が返還される保証はないことになる。
それゆえ、玉城知事は辺野古固執こそが「普天間の危険を固定化する」と主張している。国が地盤改良のための設計変更や希少サンゴ移植などを申請しても県は承認しない。政府は展望がないまま既成事実をつくっているのである。
◇
16日に玉城知事の支持母体「辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議」が那覇市内で1万人規模の県民大会を開く。
埋め立て承認「撤回」の執行停止決定を巡り、国を相手取って提訴するかどうかを、県は22日までに決定する。
玉城知事の知事選出馬に伴う衆院沖縄3区の補欠選挙は4月21日投開票だ。オール沖縄陣営のフリージャーナリスト、屋良朝博氏と自民公認・公明推薦の元沖縄北方担当相、島尻安伊子氏の事実上の一騎打ちである。7月には参院選がある。
「辺野古のへの字も言わない」という自公陣営の争点隠し戦術は、県民投票が成功したことでできなくなった。再び、新基地の是非、日本政府にどう向き合うかの判断が示されることになる。
◇
次に選択を迫られるのは全国の人々である。4月に統一地方選、7月に参院選がある。沖縄の民意に対して、各政党や候補者は意思表示をすべきだ。沖縄に新たな基地を造ることに賛成か反対か、沖縄の民意を尊重するのか無視するのか。
沖縄の市民グループが全国の地方議会に国民的な議論を呼び掛ける陳情を行う準備をしている。
政府の沖縄差別政策、民主主義の破壊、軍事化と自然破壊を止めるための一番の近道は、全国の世論、国際世論が、新基地建設阻止の意思を明確に示すことである。
米倉外昭(琉球新報記者)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年3月25日号