2019年04月25日

【内政】 官邸 内閣記者会の分断狙う 新時代拓く記者のネットワークを=南彰

 テレビ朝日記者の勇気ある告発によって明らかになった財務省事務次官のセクハラ問題から1年。新聞労連の女性組合員が中心に企画した院内集会「いま、つながろう セクハラのない社会へ」が4月15日に開かれた。
 16人の登壇者が様々な職域で起きているセクハラ被害の実態や国内法の不備などを報告したが、その一人、バズフィード・ジャパンの古田大輔編集長が指摘した。
 「ジェンダー平等への意識が低い2つの業界がある。政治とメディアだ。女性記者は男性記者と比べものにならないくらい攻撃に遭いやすい。記者会見での発言も『女のくせに』と批判され、守られない」
 多くの集会参加者が思い浮かべたのは、東京新聞社会部の望月衣塑子記者だ。菅義偉官房長官の記者会見で政権の問題を追及しているが、首相官邸による執拗な質問制限に遭っている。

記者排除の意図
 具体的には、@質問の順番を後回しにするA質問を指名する際に「この後公務がある」と質問数を1〜2問に制限するB質問中に司会の官邸報道室長が数秒おきに「簡潔にしてください」などと妨害している。
 極め付きが、官邸報道室長名で内閣記者会の掲示板に貼り出した文書だ。望月記者の質問内容を一方的に「事実誤認」と断定し、「度重なる問題行為について深刻なものと捉えており、問題意識の共有をお願い申し上げる」と申し入れた。「記者の質問の権利に何らかの条件や制限を設けること等を意図したものではありません」と言い訳が記されているが、一連の経緯を踏まえれば、記者排除の意図は明確である。
 記者と政府の間には情報量に圧倒的な差がある。仮に質問に誤りがあれば、官房長官がその場で正して、理解を求めていくのが筋だ。その上で今回の申し入れが悪質なのは、記者の質問の方が正確にもかかわらず、「事実誤認」「問題行為」というレッテルを貼ってきたことだ。

 申し入れでは、沖縄・辺野古で政府が進める米軍新基地建設の工事現場で「赤土が広がっている」と望月記者が質問したことを問題視しているが、赤土が広がっていることは誰が見ても明白な事実である。官邸の行為は記者の質問内容にまで政府見解を当てはめようとするものだ。記者登録制を設けて自由な取材・報道を制限し、「大本営発表」一色に染まっていった戦前に通ずる危険なものである。
 新聞労連が2月5日に官邸の申し入れ文を公表。「官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認することはできません」とする抗議声明を出した。その後、各地の記者に官邸の異常な統制に対する問題意識と危機感が広がった。

各地に飛び火も
 3月14日に日本マスコミ文化情報労組会議の主催で行った官邸前集会には約600人が参加。7人の現役記者がスピーチに立った。
 広島から駆けつけた中国新聞の石川昌義記者は、加計学園理事長の記者会見の話を例にしながら、官邸で起きていることが各地に飛び火する危機感を訴えた。
 「加計孝太郎さんの記者会見が岡山でありました。地元の記者クラブの人しか参加できない、時間もごく短時間にする。(官邸の)こうした行儀の悪い振る舞いは隠したいことがある人たちにすぐ広まってしまう。押しとどめるためにも僕たちがしっかり声をあげていかないといけない」

 官房長官会見をめぐる問題の発端は、加計学園の獣医学部新設をめぐり「総理のご意向」と書かれた文部科学省の文書が報じられた際に「怪文書のようなものだ」と菅氏が虚偽答弁をして隠そうとしたことだ。官邸は内閣記者会の分断を図りながら、その追及の中心にいた望月記者を排除しようとしている。
 そうした動きにあらがう原動力が、財務省セクハラ問題をきっかけに結成された「メディアで働く女性ネットワーク」だ。連携しながら、新しい時代を切り開くジャーナリストのネットワークを築いていきたい。

南彰(新聞労連委員長・朝日新聞記者)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
posted by JCJ at 10:17 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする