2019年05月08日

【沖縄リポート】 ジュゴンの死 環境省危機感のなさに唖然=浦島悦子

 3月18日、沖縄島北部西海岸の今帰仁村運天港にジュゴンの死体が漂着した。

 世界の分布の北限であり絶滅に瀕した沖縄のジュゴンは現在、辺野古新基地建設に伴って沖縄防衛局が行った環境アセスメントで3頭(A・B・C)が確認されている。基地建設工事の進捗とともに2015年6月以降、大浦湾(東海岸)を主な餌場としていた個体C(雌雄不明)が行方不明となり、また、少なくとも過去20年間、大浦湾に隣接する嘉陽海域に定住していた個体A(雄)も昨年10月以降、食み跡や姿が見えなくなった。

私もメンバーの一人である地元のジュゴン保護市民グループ(北限のジュゴン調査チーム・ザン、ジュゴンネットワーク沖縄)は沖縄ジュゴンの最大の危機と捉え、地元の活動を終始バックアップしてきた日本自然保護協会と連名で3月5日、「沖縄のジュゴン個体群の存続の危機を訴える緊急声明」を発し、基地建設の中止と広域調査の緊急実施を求めたばかりだった。

その時点で唯一確認され、繁殖の希望もあった個体B(雌。個体Cの母親であり、西海岸の古宇利島周辺を主な生息域とする)の死というあまりにもショックな出来事を受けて、私たちは4月16日、ジュゴンの保護に向けた緊急院内集会と環境省及び防衛省交渉を行った。

この20年来、地元でジュゴンの食み跡・食性調査を続けてきたジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎さんは、市民調査や防衛局によるアセス調査のデータを解析しながら、個体ごとの経緯や基地建設工事の影響は明らかであることを詳細に説明したが、防衛省は、A・Cの行方不明は「工事による影響とは言えない」、環境省は、基地建設工事による影響について「環境省としては把握していない」と、事前に提出した各8項目の質問に対してほぼゼロ回答。とりわけ、国の天然記念物でもあるジュゴン保護の責務を負うべき環境省のあまりの危機感のなさ、当事者意識の欠如には唖然とさせられた。

これまで3回にわたって、日米両政府に対し沖縄ジュゴンの保全勧告を行ってきたIUCN(国際自然保護連合)がこの状況を見過ごすはずはない。

3頭以外の未確認情報も少なからずある中で、環境省は琉球諸島全域の調査に早急に取り組むべきだ。    

浦島悦子

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
posted by JCJ at 12:45 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする