2017年11月29日の大陸間弾道ミサイル「火星15」発射以来、ミサイル発射を控えてきた北朝鮮だが、5月に入り、立て続けに2回、金正恩朝鮮労働党委員長指導のもと、火力攻撃訓練を行った。
一つは4日に東海海上で前線および東部戦線防御部隊が行ったもので、二つ目は9日に西部戦線防御部隊が行ったものだ。 北朝鮮は8日、北南将領級軍事会談代表団報道官が朝鮮中央通信社の記者に答える形で、4日の訓練は「正常な訓練計画にのっとって我々の領海圏内で行われた」ものだと強調した。だから、米国も日本も「約束違反ではないとの立場を表明した」とも主張した。
一方、米国防総省は9日、北朝鮮がこの日発射した「飛翔体」を弾道ミサイルと断定した。10日には岩屋毅防衛大臣も「短距離弾道ミサイルを発射」と記者会見で述べた。トランプ大統領は、「極めて深刻に見ている」(9日)と不快感を示している。
北朝鮮はなぜ、ここへ来て立て続けに「飛翔体」を発射したのか。2月の米朝首脳会談が物別れに終わった後、米朝協議は進展していない。そうしたなかでの動きだけに気になるところだ。
国営・朝鮮中央通信は、4月の段階で興味深い論評を配信していた。27日発の論評で、米韓が3月に実施した「同盟19―1」訓練と8月に実施予定の「同盟19―2」訓練を、「歴史的な北南、朝米首脳会談で実現した合意に対する違反」「朝鮮半島の平和雰囲気をつぶす挑発」だと非難していた。米韓が軍事訓練を行うなら、我々が通常の訓練をして何が悪いのか、ということなのだろうか。
西部戦線で火力攻撃訓練が行われた9日、米司法省は石炭を輸送していた北朝鮮船籍の貨物船を差し押さえたことを発表した。北朝鮮外務省報道官は14日、談話を発表し、差し押さえが「新たな朝米関係樹立を公約した6・12朝米共同声明の基本精神を否定するもの」だと非難した。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号