歴史修正主義勢力の「捏造」攻撃に対する元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復の闘いは4月25日、札幌訴訟(被告櫻井よしこ、新潮社など)控訴審が高裁で開廷。東京訴訟(被告西岡力、文芸春秋社)は5月10日、結審後の再開、中断など原克也裁判長の訴訟指揮で続いた異例の事態を経て口頭弁論が再開され再結審。6月26日午前11時半と一審判決日が決まった。
強引に再結審
東京訴訟は午後3時開廷。冒頭、植村弁護団は原裁判長が結審後の今年2月、被告側に新証拠を追加提出させた行為について、裁判所の釈明権行使義務の存在を指摘。新証拠「朝日新聞社第三者委員会報告書全文」の「裁判所が重要と考えた部分を明らかにし、植村側に反論、立証の機会を保証するのが適正だ」と求めた。だが、裁判長は応じず「弁論を終結する」と、一方的に再結審を宣言した。
またこの日の傍聴券交付も、裁判長(裁判体)が「席が余っても時間で切り券を配るな」と、指示していたことも職員の証言で明らかになった。
予断許さない
新証拠「朝日新聞社第三者委員会報告書全文」は、朝日新聞ホームページ上の「慰安婦報道検証第三者委員会」に公開されており現在も確認できるので詳しくは触れない。だが、札幌訴訟一審判決は、植村さんへの櫻井よしこ被告の名誉毀損の事実、櫻井被告の主張の杜撰さ(彼女のほうが「捏造」者にふさわしい)を認定しながらなお、「朝日新聞の慰安婦報道に問題がある」を逃げ道に「真実」相当性を認め、櫻井被告の植村バッシングを免罪した。そして櫻井被告は「勝った私が正しい」とばかりに居直り続けている。東京訴訟の西岡力被告はそのネタ元の「捏造」者で、植村バッシングの「膿の親」だ。原裁判長らが「新証拠」歴史修正主義へのどんな「忖度」論理を組み立てるのか。6月26日の判決は予断を許さない。
一方、札幌高裁での控訴審(本多知成裁判長)は4月25日に開廷し、植村さんの名誉回復への第二ラウンドがスタートした。開廷に先立ち植村裁判を支える市民の会が呼びかけた「公正な判決を求める署名」1万3090筆も高裁事務局に提出された。
午後2時半に始まった第一回口頭弁論で植村さんは、櫻井被告が「捏造」とした植村記事の同時期、櫻井被告本人が「(金学順さんが)強制的に旧日本軍に徴用された」と書いていた事実と、2014年の「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起しているものがあるとすればそれは朝日や植村氏の姿勢ではないでしょうか」との言説を指摘。一審判決の不当を強く主張した。また弁護団も、「一審判決は櫻井被告が植村さんや当事者への取材なしに、資料引用や事実理解の誤りを繰り返したことを看過した。『真実相当性』の判断も、最高裁判例や法理論からかけ離れている」と明解に指摘した。
第二回控訴審は7月2日午後2時半に開かれる。
編集部