去る3月18日、今帰仁村運天漁港に死体となって漂着し、現在、今帰仁漁港冷凍冷蔵施設に保管されている雌のジュゴン(個体B)の解剖が近く行われるという情報を受けて、私たち「北限のジュゴン調査チーム・ザン」と今帰仁村民有志は、死因究明がきちんと行われるよう「解剖の責任主体・解剖行程・費用の内訳の開示、結果の公開」などを求める要請書を6月3日、環境省・沖縄県・今帰仁村に送付した。
翌4日付『琉球新報』は、解剖について5月27日の今帰仁村議会臨時会で関係予算18万5千円が可決されたと報道したが、金額があまりに低いことに疑問を持った私たちは、議会議事録を調べてみて驚いた。それによると、採択されたのは「ジュゴン標本化事業」の補正予算であり、その内訳は「標本化に向けての監修アドバイザー」としての県外大学准教授の報償費2万円と旅費10万7千円、ジュゴンを保管している施設の賃貸料及びジュゴンの移動費のクレーン車の使用料5万7千円となっている。つまり、今帰仁村の予算は解剖後の標本化のためのものであり、「死因究明のための解剖」の予算ではないことが判明したのだ。
同じく4日の報道によると、個体B漂着の4日前、沖縄防衛局は周辺海域(辺野古埋め立て土砂運搬船も航行する海域)に設置した水中録音装置にジュゴンの異様な鳴音を「通常を大きく上回る頻度で確認」していたが、3日に開いた環境監視等委員会で、ジュゴンの死に新基地工事の作業船の影響はないと報告した。
しかし、防衛局が公開した資料を見ると、民間船のAIS(船舶自動識別装置)は生データが表示されているが、土砂運搬船の航路は生データではなく防衛局が作図したものであり、「影響はない」ことを裏付けるものではない。海上抗議行動メンバーによると、土砂運搬船は、抗議行動に察知されないよう、最近はGPSの電源を切って運行しているという。
死因をうやむやにしたまま解体・標本化されてしまうのではないかと危機感を持った私たちは10日、前記3者宛てに「拙速な解剖を行わない」よう求める緊急要請を行った。しかし、2回の要請にも環境省はなしの礫。真相を闇に葬らせてはならない!
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号