新聞労連は6月下旬に東京都内でシンポジウム「官邸会見の役割を考える」を開いた。
このシンポには菅義偉官房長官と東京新聞社会部・望月衣塑子記者との官邸バトル≠ェ背景にある。これの波紋は大きかった。官房報道室長が内閣記者会に望月排除≠ほのめかすような申し入れをした。これに対して新聞労連などマスコミ労組は報道の自由を制限し、国民の知る権利を阻むと官邸前で抗議行動を展開。シンポはこの問題を広く知ってもらうため企画された。
現在、菅長官との会見は平日の午前11時と午後2時の2回実施されている。金曜日の午後は記者会に非加盟だが、特定の雑誌記者やフリージャーナリストが出ている。
シンポに出席した細川護熙内閣(93年8月から94年4月)で官房長官を務めた武村正義さんは「私の頃は2回の会見に加えて記者懇談会を午後3時と夕方に行った。1日に4回記者とお付き合いした」と振り返った。
続けてこう言った。
「官房長官は政府の広報官です。情報を隠さない∞捏造しない∞身構えない≠モットーに会見に臨んだ。従って知らないことは『知らない』と答え、答えられないことは『答えられない』と言った。質問の制限や拒否は官房長官の姿勢としてよくないと思っていた」
加計学園疑惑で「総理のご意向」と書かれた政府の内部文書を菅官房長官は「怪文書」と打ち消したが、これについても語った。
「あるものを隠すという発想は取らなかった。クロをシロと言いくるめるウソを繰り返すと政府は信頼を失う。そういうことはしませんでした」
同じくシンポに出席の毎日新聞政治記者30年・与良正男さんによると、官邸側はこちらの都合の悪い話を報じない新聞・テレビがあると自信を深めている。状況を打ち破る糸口はあるのか。
「(望月記者のような)気概のある人が多く出てくれば、政治は変わると思う」(与良さん)
そうなればいいのだが……。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号