神奈川支部は7月6日、横浜市の神奈川婦人会館で例会を開いた。神奈川新聞経済部記者・田崎基さんが「アベノミクスの嘘」を話した。
田崎さんは異次元緩和といわれる金融政策、10兆円規模の公共投資など機動的な財政政策、規制緩和などで民間投資を促す成長戦略によって経済成長させるアベノミクスのシナリオを説明した。
そのシナリオは、政府が国債を発行し、国債を買った金融機関が日銀に売却。日銀は紙幣を印刷してそのカネを銀行に支払う。大量の円が出回り円安になることで輸出系企業の利益があがり、それが給与や設備投資に回る。また、金利が下がってカネが市場に回り、需要が喚起されることで物価が上昇するはずだった。
しかし、企業の利益は増加したものの実質賃金は上がらず、消費支出指数は低下した。
肝心の需要が伸びなかった理由について田崎さんは、日本に有望な成長分野がない、企業が思いのほか利益を賃金に還元しなかった―この2点をあげた。
企業が増えた利益を賃金に回さずに済んだのは、経営方針に沿い非正規雇用を拡大させて、コストのかかる正規雇用の社員を減らしたからだと分析する。
また、せっかくの成長分野である再生エネルギーや蓄電池への投資を企業がためらったのは原発維持政策が原因ではないかと話す。
田崎さんは所得階級別の世帯数割合を過去と比較したグラフでアベノミクスの結果を示した。生活が苦しい層が増えて、中間所得層が減っていることが一目瞭然だ。
にもかかわらず安倍政権を支持する若者が増えているのは、増大し続ける貧困層の現実を伝えきれていないからだと田崎さんは自戒を込めていう。
アベノミクスに批判的な学者などは、国債への信認が失われ暴落する危険性を指摘するが、そもそも景気は大きく冷え込んでいる。
田崎さんは全ての地方銀行で貸倒引当金の積み増しが進んでいることをあげた。地銀は「今の景気は薄氷の上を歩くように危うい」と見て先手打っている証拠だという。
保坂義久
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号