7月はじめに九州を旅した。
地球温暖化による集中豪雨。鹿児島や宮崎では死者が出た。異常降雨は三〇年前の一・五倍ほどだという。国は「行政の限界。自分の命は自分で守って」とTVで呼びかけた。動けない高齢者もいるのに国は救わないよ、との開き直りである。
地球環境問題が主題であったはずのG20は一体何の意味があったのか。日本は気候変動防止に背を向けていることが、会議を通じて逆にあぶりだされてしまった。
パリ協定はCO2排出ゼロの目標で合意した。
EUは2050年までに80〜95%を削減する。しかし、日本の削減目標は30年に26%。主要国の中でも最低である。加えて最大のCO2排出源である石炭火力発電を「基幹電源」と位置づけ、25基を新設する。電力企業や銀行はインドネシアなどへの輸出に奔走。原発を拒否したベトナムにも石炭火力を売り込む。日本はパリ協定からの離脱を決めたトランプ政権同様、協定を骨抜きにしたいようだ。
一方フランスは2021年、イギリスは25年までに石炭火力をゼロとする計画だ。豪雨災害が頻発しても日本は「脱石炭」を決して言わない。
G20の次の課題であったプラごみ問題。日本はここでもトリックを使う。「プラスチックは燃やせば良い」これを「サーマル・リサイクル」という…と。焼却はCO2を生み、塩ビはダイオキシンを出す。各家庭がプラを分別しても焼却炉では混焼されたりする。産廃炉を含めて2千基以上の炉が夜昼なくプラを燃やす。これを「リサイクルだ」と称するのは世界では否定されている。
その上で途上国への輸出問題がある。ベトナムのニャチャン港に山積みされた日本のプラごみとドラム缶群を見た。プラは熔かされて質の悪い樹脂となり、残りは野焼きされた。廃棄物の移動を禁ずるバーゼル条約違反だが「有価物」の名目だった。いま排出国への返還が始まっている。
地球の海には800万dのプラごみが漂う。それは砕けてマイクロ・プラスチックと化す。魚類はPCB等を吸着したプラを食べ生体濃縮を進める。危険はブーメランのように人体に還流する。
やれストローだレジ袋だと、国もメディアも消費者の使い捨てを標的にするが、これはプラ生産量3位の日本の、ほんの一部に過ぎない。20年前のドイツ。すでにレジ袋もプラ容器も無いのに驚かされた。倫理観ではない。プラ生産企業に回収責任を持たせたため市場に出なくなったのだ。
昨夏スウェーデンの女高生グレタが始めた温暖化阻止行動は今や125カ国に拡がった。今月、世界7千の大学は「気候危機」を共同で宣言した。
世界から取り残される災害大国・日本。国家が温暖化を顧みず「自分の命は自分で守れ」と言いだすようでは困るのだ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号