2019年08月23日

【おすすめ本】巣内尚子『奴隷労働 ベトナム人技能実習生の実態』─安い労働力として使い捨てにする現場の生々しい実態をルポ=栩木 誠

 「移民政策はとらない」─この安倍発言を反故にするような、日本の「移民大国化」が進む。
国内に住む外国人の数は約267万人、総人口の2%を超えた。中でも目立つのが、農水産業や製造業などで働く外国人技能実習生と留学生で、合わせて60万人を超える。コンビニや外食、建設、介護、農水産業など、過酷な労働条件下で底辺を支える、彼らの存在なくしては「持続不可能」な産業も数多い。

 今年4月から施行された改正入国管理法の国会審議では、「低賃金の単純労働に従事され、技能が実習できない」実習生の劣悪な環境、人権軽視の問題点が赤裸々にされた。この利害と差別の複雑な結合が生み出す問題点を、急増するベトナム人実習生に焦点を当て、浮き彫りにしたのが本書だ。
 「送り手」のベトナム、そして「受け手」である日本の両国で、技能実習生の実態に迫る。その多角的な取材は労働組合などの支援者や仲介業者など、140人を超える。
低賃金に長時間労働、多額の借金、暴力、パワハラ、セクハラ、劣悪な住環境、除染などの危険業務…その一方で、隆盛を極める“実習生ビジネス”。

 現代日本の様々な社会問題の実態が、実習生などの発言から鮮明にされる。著者の五感で得た迫真のルポは、その実態を生々しく伝える。
 著者は「都合のよい労働力として使い捨てにする─この認識を捨ててこそ、移住労働者を社会が受け入れる必須条件なのだ」と、強調する。しかし、「特定技能」という新たな衣をまとった改正入管法下で、「奴隷労働」は、さらに“再生産”されようとしている。それを許さない「私たち」の取組みが、重要になっている。(花伝社2000円)
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posted by JCJ at 09:26 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする