ジュゴンの死体漂着から4カ月を経た7月17日、解剖が実施され、同29日、実施主体である環境省(沖縄事務所)・沖縄県・今帰仁村の三者は解剖結果を報道発表した。
それによると、沖縄近海に生息するオグロオトメエイの尾棘刺入に起因する死亡の可能性が最も高いという。多数の鋸歯状の突起を有する長さ約23センチの尾棘が腸管を突き破って腸内を移動し、腸の内容物が腹部全体に充満していたというから、その痛み・苦しみは想像を絶する。死体漂着4日前に水中録音されたジュゴンの頻繁な鳴音は、断末魔の叫びだったのだろう。
沖縄美ら島財団、鳥羽水族館、国立科学博物館の獣医師6名が携わったという解剖結果におそらく間違いはないと思われるが、しかし、これで「幕引き」させてはならない。
亡くなったジュゴンの生息域は辺野古への土砂運搬船の航路と重なっており、直接の接触がなかったとしても運搬船の頻繁な航行が海生生物の生態を攪乱し、通常ありえない事故が起こった可能性は充分ある。今回の事故を遠因も含め究明すること、基地建設の進行に伴って行方不明になった2頭のジュゴンを含め、それ以外にも少なくないジュゴンの目撃情報をもとに琉球諸島全域調査を行うことを環境省や沖縄県に強く求めたい。
そしてもう一つ、ジュゴンの脅威となっているのが、不発弾の海中爆破処理だ。この8月1日にも中城村沖で実施されたが、沖縄戦の悪しき「置き土産」である不発弾は陸上だけでなく沿岸海域にも未だ多数残留しており、海で見つかったものは海上自衛隊が爆破処理するのが通例となっている。しかし、これによって沿岸域に住むジュゴンに直接影響するだけでなく、餌場である海草藻場を含め、沖縄の観光資源であるサンゴ礁生態系そのものを破壊してしまう。
水中にある不発弾はダイナマイトを仕掛けて誘爆しない限り爆発しないため、放置または海溝のような深い場所に移動して「水畜」するのが国際的な常識だという。この常識を行政や市民に広く知らせ、海中爆破処理をなくしていきたい。
ジュゴンの生存の脅威となる要素を一つひとつ取り除いていくことが、彼らを絶滅の危機に追い込んだ私たちの責任だと痛感している。
浦島悦子
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号