2019年08月31日

【内政】SNS発信力で無党派まき込む れいわ新選組「着火剤」に活用 N国 炎上動画平気でアップ=畠山理仁

 インターネットの発信力が、テレビや新聞による「諸派の黙殺」を凌駕した。これが今回の参院選最大の特徴である。
 本来、すべての候補者は同じ条件で立候補している。しかし、既存メディアは政党要件を満たさない政治団体を「諸派」と位置づけ、ほとんど報道してこなかった。

 そんな中、今回は諸派の扱いを受けた「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党(N国)」がインターネットを活用して議席を獲得した。両党ともに政党要件(得票率2%以上)をクリア。これは参院選に非拘束名簿式が導入されて以降、初めての快挙である。
 参院選の期間中、れいわ新選組の山本太郎代表は街頭で何度も叫んだ。
「経団連に都合の悪いことを言う我々は『放送禁止物体』。テレビには映らない。だから、あなたの力で広げて下さい!」
 街頭演説終了後には、聴衆と写真撮影の時間を取った。それをSNSで拡散してもらうことで、選挙に出ている事実を世間に広げた。既存メディアに頼らない情報拡散の輪が広がっていた。

 インターネットを使った選挙運動が解禁されたのは、2013年4月の公職選挙法改正だ。それから6年が経ち、業界では「投票行動に与える影響は大きくない」というのが通説となっていた。
 この常識を大きく変えたのは、山本代表のプロデューサーとしての力だ。れいわ新選組はSNSでの発信を、支持拡大のための着火剤として活用していた。

寄付3万3千人超
 4月に山本代表が一人で立ち上げたれいわ新選組は、参院選の選挙資金を寄付で賄うことをインターネットで発表した。
 公示前日までに集まった寄付額は2億3133万円。選挙が始まると、SNSで街頭演説の告知を見た人たちが続々と街頭演説に駆けつけた。聴衆が1000人を超えることもあった。演説動画はネット上にアーカイブされ、ボランティアによる演説の文字起こしも迅速に掲載された。投票日前日には、寄付金額が4億円を超えた。
 しかし、それでもテレビや新聞は報じない。自主規制に縛られ、世の中の事象を速報する役割をほとんど放棄していた。

 山本代表の戦略が成功した理由は、ネットでの盛り上がりを過信しなかったことだ。ネットはあくまでも有権者を街に引き出す手段。実際の勝負は地道な草の根活動だ。そのため、有権者を巻き込むことに心を砕いた。
 まずは4月の結党会見で「候補者を何人擁立するかは、皆様の寄付額で決めます」と全国に呼びかけた。ゲームの行方を有権者に委ねるやり方は「AKB総選挙」にも似ている。誰もが当事者として参加でき、結果に関与できる仕組みだ。
 街頭演説会場には、ボランティアの登録窓口と寄付窓口を設置した。政治への不満は持ちつつも、政治と関わる入り口を見つけられなかった有権者たちが列をなした。
 寄付の最低金額は数十円。高額の寄付者は多くない。しかし、少額寄付を中心に、寄付者の数は3万3千人を超えた。

 候補者には、生きづらい日本の象徴である「当事者」を擁立した。しかも、ほぼ無名の新人だった。各候補者のドラマに感情移入した有権者は、ますます「政治は自分たちのものだ」という当事者意識を刺激された。
 比例で優先的に当選する特定枠に、2人の重度身体障害者を据えたことも大きい。山本代表が捨て身で臨むことで、支援者たちはさらに燃えた。
 こうした戦略には、つねにブレーンの存在が囁かれる。しかし、山本代表は笑って否定した。
「そんな人がいたら紹介してほしい。候補者は全部自分で口説いています。次の総選挙では、最大で100人立てたい」

反NHK票見込む
 N国の立花孝志代表はユーチューバーだ。13年の結党時から「19年の参院選で1議席取る」と豪語してきた。
 そこから6年間、地方議会選挙への挑戦を続け、仲間を増やし、勝ち方を研究してきた。候補者の携帯番号を公開し、有権者との距離も縮めた。
「地方議員はオイシイ仕事。当選するのは簡単」と立花代表は言う。
 実際、4月の統一地方選挙では、N国から26人の当選者が出た。その歳費の一部がN国の運営を支えている。

 躍進の背景には、国民のNHKに対する根強い反感がある。そのため、党の存在が認知されれば一定の得票が見込める。だからN国は炎上する動画も隠さずアップする。
 視聴者が増えれば広告収入が増える。敵が増えても党の存在は広まる。どちらに転んでも、N国は損をしない仕組みだ。

 当選後、N国は丸山穂高衆院議員を入党させ、渡辺喜美参院議員と新会派を結成した。タレントが批判的な発言をすれば、テレビ局に出向いて抗議もした。炎上上等な姿勢は以前と変わらない。
 政党要件をクリアした今、メディアは無視できない。両党が本格的に暴れるのは、これからだ。

畠山理仁(フリーランスライター)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 14:52 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする