2019年09月04日

【内政】大分と宮城 東西参院選最激戦区からのリポート 安倍政権に大打撃=柳瀬陽之助・多々良哲

お上嫌いの風潮 脈々
 東京の知人が今回の参議院選挙を評して「大分はおそろしい」と感想を漏らした。新顔の革新系候補が、首相側近の有力保守候補を破ったからだ。
 九州各県の1人区のうち、革新が勝ったのは大分だけ。予想しない結果だった。大分弁で「おそろしい」を「おじい」という。
 3人が立った。事実上、保革の一騎討ち。激戦を制したのは安達澄(きよし)氏。無所属で、野党連合4党の推薦・支援を受けた。別府市出身、49歳。22年間のサラリーマンを辞め4年前、別府市長選に出たものの、苦杯をなめた。5人候補のうち最下位に近かった。
 シンボルカラーは出身の青山高校名から「青(ブルー)」を選んだ。白シャツに青ズボン、運動靴で県内を駆け巡った。若さと新鮮さをアピール。国政論争より「現場主義」「政治に地方重視」を強調した。
 相手は3期目を目指す自民・公明推薦の礒崎陽輔氏。自民党所属で61歳。総理補佐官として「2期12年の実績」を誇示した。安倍晋三総理や菅義偉官房長官、小泉進次郎氏らが応援に駆け付けた。

 開票の結果、新顔の安達氏が1万6655票差で初当選した。安達氏の勝因は野党連合3党と共産党の支援による「大分方式」が功を奏したほか、あえて政党色を出さず、無党派層を取り込んだ。
 これに対して礒崎氏の保守陣営は3期目のおごりと組織の劣化が災いしたようだ。むしろ自民党の「敵失」という見方もある。参議院大分選挙区は革新のDNAが脈々と流れる。革新候補が2004年以来3回、自民党候補を破った。
 昔から社会党の牙城でもある。比例代表で社民党前党首の吉田忠智氏(大分県出身)も返り咲いた。「トンちゃん」こと元総理の村山富市氏も95歳で健在である。

 今回の投票率は50・54%で過去最低だが、もともと大分人は選挙好き。昔から選挙後の訴訟の多いこと、「東の千葉、西の大分」とやゆされる。
 自民党副総裁や衆議院議長の大物代議士が総選挙で落選する怖いところ。反権力やお上嫌いの風潮もある。
 「九州は一つ」と言われるが、そんなことはない。瀬戸内海を隔てて関西とつながる大分県。他県とは違った異質なおじい風≠ェ吹いている。

柳瀬陽之助(別府市在住ジャーナリスト)


60日の新人VS60年世襲
 今回の参議院選挙宮城選挙区では、5月に名乗りを上げた新人「市民と野党の統一候補」石垣のりこ氏が、4期目を目指す自民党現職「名門政治家一家の3代目」愛知治郎氏に勝利した。その闘いは「60日の新人が60年間の世襲に勝った」と称された。
 その勝因の第一は、宮城における「市民と野党の共闘」の蓄積である。2016年の参院選勝利、17年の仙台市長選勝利、そして18年の女川原発県民投票を求める署名運動と、市民と野党が共同で物事を成し遂げる経験を積み重ねてきており、その中でお互いの信頼関係が醸成されていた。
 それを下支えしたのは、選挙以外の日常の様々な市民運動、すなわち憲法、原発、沖縄等々の諸課題を巡る地域の共同の取り組みであった。それらの活動が多くの有権者からの信頼を得ており、これが今回の勝利の土台となったことは間違いない。

 第二には、なんといっても候補者がよかったということである。石垣氏は親しみやすい庶民派であり、有権者の声を丁寧に聞く草の根選挙を展開しながら、その主張は鋭角であり、忖度もしがらみもなくハッキリと物をいう態度が有権者の共感を呼んだ。
 同時にそれは石垣選対のイメージ戦略でもあった。若い女性候補でありながら「笑わない」ポスター、「上げるべきは賃金であって消費税ではない」という断定調のキャッチフレーズが浸透し、SNSや動画配信を駆使したネット戦略によって若い世代にも届いていった。
 いわば石垣氏のパーソナリティ、政策、活動スタイル、そして言葉の力があいまって、政治をあきらめるなというメッセージとなって、無党派層の人々に一定届いたのではないか。7月17日仙台駅前に三千人が詰めかけた「れいわ新選組」街頭演説会で、石垣氏が山本太郎氏と並んで登壇した姿が、それを象徴していた。

 終わってみれば、宮城選挙区は全国最少の得票率差の激戦区であった。私たちは、権力が力任せに共闘つぶしに襲いかかる「官邸直轄選挙」の恐ろしさをひしひしと感じた。来るべき衆院選に勝利するためには、私たちの共闘のウイングを、政治を諦めていた無党派層の人々へも広げる言葉を、私たちは持たなければならない。

多々良哲(市民連合みやぎ事務局長)


JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 17:48 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする