2019年09月05日

【月刊マスコミ評・放送】 英独も模索する「公共性」の回復=諸川麻衣

「NHKをぶっ壊す!」をスローガンにNHKのスクランブル放送化を訴える「NHKから国民を守る党」(N国党)が、参院比例で一議席を獲得、選挙区の得票率で政党要件を満たした。あの丸山穂高代議士を入党させたかと思うと、渡辺喜美議員と「みんなの党」会派を作り、さらにスクランブル化と引き換えに安倍改憲に賛成を打ち出すなど、立花党首の打算的な言動は相変らずである。それを批判するのはたやすいが、問題は相当数の有権者がN国党の主張に共感し、わざわざ投票したという事実である。選挙直後のTOKYOMX『モーニングCROSS』の集計でも、スクランブル放送化に賛成二〇六四、反対七〇八という衝撃的な結果が出た。

今の受信料制度やNHKのあり方へのこうした批判の要因と思われるものを列挙してみる。まず、受信料制度を合憲とした二〇一七年の最高裁判決を錦の御旗に、NHKの集金活動が高圧的になったこと。政権寄りの政治報道のせいで国営放送同然に見られていること(反面「番組が反日的だ」との批判もある)。携帯やカーナビも受信機器とみなして契約を強いる論理が、生活実感になじまないこと。庶民にほぼ無縁な4K8K放送に莫大な予算がつぎ込まれていること。そして、ネット社会の進展によって、NHK・民放を問わずもはやテレビが重要な情報源ではなくなってしまっていること。災害であれ選挙であれ、人々はネットで一次情報を取得できるだけでなく、自らも発信者になりうる。放送制度が前提としてきた、情報発信の専門性・寡占性が大きく変化し、「電波の希少性」がかつてほどの意味を持たなくなってきたのかもしれない。

こうした趨勢の中、イギリスではBBCが、オンライン専門の若者向けチャンネルで犯罪、ドラッグ、セックス、LGBTQなど青少年にとって重要なトピックを扱った番組を配信、注目されている。また放送番組のコンテンツも動画共有サイトに積極的に配信しているという。ドイツは二〇一三年に、従来の受信料を、ネット端末を含む「放送負担金」に変え、費用の徴収の根拠を「受信機の所有」ではなく、「公共放送によるサービスを享受する権利」に変更した。さらに今年四月には値下げにも踏み切った。

「公共メディア」を自称するNHKが受信料制度を維持したいのであれば、疑問符を突き付けられた「公共性」を、日々の放送とネット発信を通じて回復してゆくしかないだろう。  諸川麻衣

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年8月25日号
posted by JCJ at 10:32 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする